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 イザークは養護院の前に捨てられていた。二歳のころの話だ。
 背負っていたリュックには名前と生年月日と血液型とコーディネーターの2世代目であるということ。それに捨てられた経緯が書かれた手紙が入っていた。イザークの両親は二人ともコーディネーターだったが事故で両親が亡くなり、地球に住むナチュラルの祖母に引き取られたがその人も病で亡くなったために親戚の間をたらい回しにされた挙句にここに置いていくことになったのだという。ナチュラルばかりの親戚たちはコーディネーターの子供に恐れを抱き、近所からは白い目で見られる生活に耐えられなかったのだ。
 さまざまな事情で親とは暮らせない子供達が暮らす養護院には似たような事情の子供も多い。だからイザークは特別なわけでもなく、その日からその施設で暮らし始めた。
 イザークはとても素直な子供だった。あからさまなコーディネーターへの迫害に身をさらすことなく育ってきたから、自分を厭う存在など知らなかった。だから、すぐに友達もできたし、先生と呼ばれる施設のスタッフにも懐いた。子供達の中でも飛び切りのかわいさと利口な振る舞いのおかげでとてもかわいがられていた。身内に捨てられたとはいえ、イザークにとってはこの施設の人たちは家族と変わらなかったのだ。
 そんなイザークの生活が変わるきっかけは、施設での暮らしも三年を過ぎた秋の日の出来事だった。
「おい、イザーク、こっちに来いよ。ゲームしようぜ」
 一番年上の少年がイザークを呼びつけた。施設は成人と同時に出なくてはならないから、その少年はあと数ヶ月で施設をでることになっていて、弟のように懐いていたイザークはそのことを少しだけ寂しく思っていた。だから声を掛けられて喜んで少年の部屋に向かったのだ。幼年学校に入ると二人部屋を与えられる。イザークはまだ6人部屋だったからその部屋は憧れでもある。テレビとゲーム機がいつだって使えるのだからとてもうらやましい。
「ヨハン、何のゲームして遊ぶの?」
 部屋にはもう一人の住人であるクリスもいた。二人とも14歳になっているから机の上には難しそうな教科書が並んでいる。
「イザークは何がしたい?」
「僕はシューティングがいいな」
 無邪気に言うイザークにクリスはゲーム機のコントローラーを渡してやる。
「好きなの選んでいいよ、ほら」
 その言葉にイザークは大喜びでソフトを選び出す。
「ねぇ、最初に誰がやるの?」
 振り返ったイザークの身体は床に押さえつけられた。大きな声を上げようとする口は手のひらで塞がれる。
「ぅっ、ぐっ」
 バタバタと暴れる身体はあっけなく二人の少年によって押さえつけられて、タオルで猿轡をされた。信じられない事態に目を見開くイザークに向かってヨハンは笑う。
「おとなしくしてろよ、イザーク。そうすれば痛くなくしてやる」
 その目の色にイザークは怯えた。優しいお兄さんはそこにはいなかった。獣のような眼差しが怖い。
 両腕を縛られてベッドの上に放り投げられた身体は下半身をむき出しにされている。何が起こるのか訳がわからずにいると、ヨハンがイザークの足の間に手を伸ばした。
「さすがにガキだな。まだ勃たねぇか」
 柔らかなそこを握り締められてイザークばパニックになる。普通じゃない、そう思ったのだ。竦む身体をいいことにうつ伏せにするとヨハンは何かをイザークの尻に塗りたくった。冷たくて口から悲鳴が漏れる。だがそれは音にはならずにタオルに吸い込まれた。やがてクリスがイザークの顔を枕に押し付けた。
「声なんて出すなよ」
 その直後、イザークは尻に何かを埋め込まれた。痛くて、ただ痛くて。顔をあげることも許されずに身体が引き裂かれる痛みに涙がこぼれた。それは出し入れされて、小さな身体の奥を穿つと内臓が痛んだ。とてつもない痛みと自分の身体に何が起こっているのかわからない恐怖にイザークは声もでなかった。
 どれくらい時間が経ったのかそれが止まると押さえつけられていた手が離れる。イザークが力なく顔を横に向けると、そこには下半身を露出させたクリスがいた。
「見てろ、これをお前のケツに挿れるんだ。これはお前が悪い子だから罰するんだ、覚えておけ」
 今度は顔を押さえつけられなかった。だからイザークは自分の身に起こったことを全て目にすることになった。抱えられた下半身にクリスの性器が押し込まれる。やっぱり痛くて涙が止まらない。クリスが身体を動かすたびに身体の奥が痛くなった。気持ちが悪くて吐き気もしてくる。
 罰だといわれた。何をしたのか覚えていないけど、お兄さんたちを怒らせてしまったのなら自分が悪いのだ。だからイザークは涙は零しても悲鳴だけは上げないようにしていた。そしてそのままイザークは意識を失った。

 それからイザークへの罰は毎週のように続いた。
 呼び出されて裸にされて、杭を埋め込まれる。ときおり最後まで意識を失わずにいると、誰にも言うなと脅された。その頃には薄々それが罰なんかじゃなく彼らの楽しみだというのも気づいていたがこの施設にいたかったらおとなしくしていろといわれていたから誰にもいえなかった。彼らは証拠を残さないようにしていたから、これが表沙汰になればイザークが話したのだとすぐにばれてしまうのだ。
 そして少年達はイザークを外へ連れ出した。連れて行かれたのは街中にあるホテルだった。部屋まで連れて行かれたイザークは開いたドアの中に押し込まれ、少年達はそれと引き換えに金を受け取っていた。そういう嗜好の人間にイザークを斡旋したのだろう。ドアが閉じるとイザークはベッドに連れて行かれた。相手の大人はスーツを着たビジネスマンだった。イザークの服を脱がせるとその未熟な性器を弄び、身体を裏返すと指をそこに押し込んだ。
「ひぃっ」
 腕は縛られていたが、口は自由だった。
「おとなしくしていなさい。でないと君はホームに帰れないよ。言うことを聞けば君にも小遣いをやろう」
 ホームに帰れない、というのはイザークを縛り付けるには十分な言葉だった。自分は一度捨てられている。養護院に帰れなくなれば本当に行き場所がなくなってしまうのだ。
 おとなしくなったイザークにその男は己の屹立を押し当てて笑った。
「君はとてもいい子だね」
 潤滑剤もなく大人のものを受け入れたイザークは血を流して意識を失った。少年達の比ではない質量に身体が耐え切れなかったのだ。
 やがてイザークが意識を取り戻すと、その男は金を渡した。
「私は仕事に戻るから君はシャワーを浴びてから帰りなさい。エレカを拾うといい。このことを誰にも話してはいけないよ。君だけじゃなく君のホームが潰されてしまうからね」
 そう脅されたイザークは何事もなかったようにシャワーを浴びて服を着てホテルを出た。夕方の忙しい時間帯では、人の多いホテルで子供が一人で歩いていても気に留める者もなくて好都合だった。

 だがそのままイザークはホームには帰らなかった。少年たちがするのとは違い、体には傷が残っていたし、戻ればまた少年たちに遊ばれ売られてしまうだろう。だから手にした金でシャトルを乗り継ぐと他のプラントに向かったのだ。そしてイザークは路上に寝泊りをするようになる。別のプラントだとしてももう施設のようなところに行くのは怖かった。あんな目に遭うくらいなら一人で生きていく方がマシに思えた。ホームのコンピュータでアクセスをしたら簡単に出てきたから自分が「レイプ」されているのだということを知っていた。それがどんなに酷い罪なのかもきちんと説明されていて、そんなことをされている自分はとてもいけない存在なのだと思っていた。少年たちがホテルに連れてきて金を貰っていたことは許せないが、そのおかげで自分はあの施設から抜け出すきっかけができたのだ。
 人の目から逃れるようにして路上で暮らしながら一年の時間が過ぎ、二度目の冬がやってきた頃、イザークはアスランと出会った。
 それが、イザークの運命を変える出会いとなった。





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