「・・・・・・」
 ゲストルームに備え付けられたシャワールームで体を洗い流して出てくるとそこにはふかふかのバスタオルとアスランのために用意された着替えが畳んでおいてあった。
 白い籐で編んだカゴにいれられているのは、下着とアンダーシャツとズボンとカジュアルなシャツ。
 だけどその一番上においてあるものにアスランは絶句した。
『アスランにお似合いだと思って以前買ったお洋服がありますの』
 シャワーを使う前に着替えについてラクスはそんなことを言っていた。ラスクの着ているものはフワフワとお姫様みたいな服が多いからどんな趣味なんだろうと心配していたのだが、アウターに関しては極めてシンプルで普通だった。グレーの細身のチノパンと白いシャツには透かしで小さな柄が入っている。白シャツの下に着るシャツも別に普通のモノトーンのボーダー柄だ。
 だが絶句したのはそれ以外の物のせいだった。一番最初に着るそれはご丁寧に一番上においてある。
 畳まれた一枚のトランクス。
 それが強烈に異彩を放っていた。
 ファッションセンスはいまいち評判のよくないアスランでさえドン引きしてしまうくらいに。
 コットンの布に描かれたのはどこをどう見てもイチゴの絵柄。ご丁寧に真っ赤な果実に緑色のへたも葉っぱも描かれて、一面がイチゴ畑のようなトランクス。
 しかも全体はピンク色。乙女のムードたっぷりのやたらとかわいらしいピンクのトランクス。
 ・・・・・・。
 これを履いて帰れというのか。
 アカデミーに、イザークの待っているアカデミーの寮に。
 目の前が真っ暗になる気がしてアスランは自分が脱いだパンツを探したがすでにそれは撤去されたらしく見当たらない。
 だが他に替えのものはなくそれを着るしかないらしい。しばらく躊躇っていたアスランはあきらめたように長くため息をつくとそれに長い足を通した。




「いかがですか、サイズは合いまして?」

 シャワールームから出るとラクスがソファに座って待っていた。どうやら心配で待ち構えていたらしい。

「えぇ大丈夫です、ありがとうございます」
「よかったですわ」

 どうしようと思いつつアスランはその疑問をついラクスに訊ねてしまった。

「その・・・この着替えは全部ラクスが選んでくださったんですか」
「はい、アスランにお似合いかと思いまして。男の方のお洋服なんて買ったこともなかったのですけれど、もし結婚するならいずれは一緒にお買い物にも行きますでしょう? だから今のうちからお勉強しなくてはと思ったんですの。男の方の下着って思っていたよりもかわいいものがたくさんあってワタクシとっても楽しかったですわ」

 上に着るものはあまりかわいいものがなくてつまらなかったんですけれど、新発見でしたわ。にっこりと笑いながら言う歌姫にアスランは何もいえなかった。

「それは・・・・・・ありがとうございます」

 にっこりと笑うラクスにこれ以上アスランは何もいえなかった。好意で選んでくれたものに文句なんて言えるわけもない。
 やっぱり自分はヘタレなのかもしれない。いや、ヘタレだ。イザークに腰抜けって言われても文句なんて言えない。
 いや、こんな姿をイザークに見られるわけにはいかない。イチゴ柄のパンツを履いているところなんて・・・。










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