軍用でないシャトルに乗るのは久しぶりだった。
宇宙を移動するときはMSか戦艦ばかりだったから、心地よいシートは何だか落ち着かない。しかもディアッカの奴はファーストクラスを取っていたから------大変だったというのはこういうことらしい------なおさら落ち着かなかった。
結局、アイツには連絡しなかった。
迷いはしたが、プラントから離れた生活をしている奴を俺の都合で振り回したくなかったからだ。
いや、本当の理由は違うのかもしれない。
変わってしまったアイツに会うのが怖いのかもしれなかった。メールでは変わりない様子を伝えてはいるけれど、俺は軍人ではないアイツの姿なんて想像もできなかったから。
窓の外はどこまでも続く漆黒の闇だった。
ここで幾つもの命が散っていったのが信じられないほど静寂に包まれている。
MSを駆り、敵を撃ち、友を失った場所だった。
ほんの一年ほど前のことだというのに、遠い過去のように思えるのが何だか不思議だった。
あのときの自分たちは、間違いなく輝いていた。自分を、自分たちを信じてまっすぐに進んでいたから------。
■□■□
タラップを降りると強い日差しが容赦なく照りつけて、どこまでも果てのない空が頭上に広がっていた。その空気を無意識に深く吸い込んでいる自分に気がついて、まるでアイツと同じ空気を味わうみたいで俺は慌てて口を閉ざした。
簡単な手続きで入国審査を終えて荷物を受け取ると、俺は空港のエントランスを出た。相変わらずまぶしいくらいの日差しに目を細めながらレンタカーでも借りようかと視線をめぐらせたときだった。
「イザーク!」
信じられない光景が目に飛び込んできた。
停めたオープンカーに寄りかかるようにして手を振っている少年。
大きなサングラスをしていて表情をよく見ることはできないけれど、クセのある闇のような深いブルーの髪の色。
見間違えるはずがなかった。
「アス・・・ラン・・・?」
まるで他人の口から聞こえるように呟いた名前が、自分でも信じられなかった。
そのまま、彼は立ち尽くしている俺に歩み寄ってくる。
「よかった。着くのが遅くなったからもういないかと思ってた」
言いながらサングラスを外した顔は間違いなく、アスラン・ザラで。
にこやかに笑いながら俺の手から荷物を取り上げる。
されるがままにバッグを預け、手が軽くなると同時に俺は思い出したようにようやく声に出す。
-3-