「で、どんな子なんだよ、お前の好きな子って?」

 間髪おかずに発せられた思いがけない質問にアスランは今度こそ答えられなくなる。まさか、君の同室者でいつも俺に負けたら部屋のものを手当たり次第に破壊してる負けず嫌いのオカッパの少年だよ、なんて、たとえプラントの重力が無くなってもいえる訳がない。

「いや、そうだな・・・かわいいというより美人なんだ」

 頭の中にイザークの顔を思い浮かべながらアスランは言う。イザークを形容するなら綺麗ということになるけれど、そこは腐ってもアスラン・ザラ。女の子だと思っているディアッカには美人という当たり障りのない表現のほうがいいだろうと一瞬にして優秀な頭脳は判断したのだ。

「へぇ。ラクス・クラインはどっちかっていうと美人っつーより癒し系だもんな。なるほどね、お前ってかわいいのが好みかと思ったけど意外だな」
「それはまぁ・・・」

 曖昧に答えるアスランに、この話題にはあまり興味がないらしいディアッカは質問の答えを与えた。

「挨拶は基本だぜ? 普通の人間関係だって挨拶は最低限必要なもんだろ? それもできないんじゃ話にならないと思うけど・・・まさかお前、相手に無視でもされてんの?」

 イザークとの日ごろのやり取りを思い返してアスランは小さく頷きながら答える。

「無視されてるってわけじゃないけど・・・。相手の様子からすると俺から声かけられるのも嫌みたいなんだ」

 言いながら気分が落ち込んでくるのを自覚してアスランはため息をついた。それにディアッカは励ますように言葉を探す。

「でも、無視されてるんじゃないなら希望はあるかもよ。気になる相手だから逆に意識して普通になれないってパターンもあるし」

 俺だったらすぐに見分けがつくんだけどな、と付け足してディアッカはアスランの肩を叩いた。

「ま、とりあえず挨拶が普通にできるようになるまでがんばってみれば? 本当に嫌ってんなら完全に無視するだろうし、そうじゃないならなんか違った反応すると思うぜ?」

 その言葉にアスランは頷く。

「そうだな。挨拶くらいなら俺にもできそうだ。ありがとう、がんばってみるよ」

 幾分、明るい表情を取り戻したアスランにディアッカは人のよさそうな顔で「がんばれよ」と席を立ったアスランの背中を見送った。

「で、アスランの好きなやつって誰なんだ?」

 ディアッカは一人言って、楽しいネタができたとばかりにニヤニヤと笑った。













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