「ち、違うっ!俺が言ったのは色だけだ。貴様の髪は青だからな、勝手に深読みするんじゃない」

 そんなイザークにアスランはやわらかく笑う。きっとあれこれ店員に注文をつけたであろうイザークを思うと素直に嬉しかった。

「ありがとう」
 
 改めて言うとアスランはイザークを背中から抱きしめる。不意打ちを食らったイザークはじたばたと暴れて抵抗したが腕の中らから抜け出せなかった。そのかわりに場所にふさわしくないほどに声が大きくなる。

「何する!貴様っっ」
「感謝、してるんだ」
「だからってこんな場所で・・・っ」
「君こそ声が大きいよ」

 咎められてイザークは声に詰まる。

「こんな場所だから・・・、君とのことは誰にも言えないからせめて母さんには知っていてほしいと思ったんだ」
「アスラン・・・」

 抱きしめられた腕の中でイザークは目を閉じた。自分を抱く腕に手をかけてずっと黙ったまま。
 5月のさわやかな風が広い公園の中を通り抜ける。その風に吹かれてイザークの柔らかな髪がゆれた。それにアスランは鼻先を埋めてみせる。
 かすかに甘い沈黙が続く。それを破ったのはイザークだった。
 ぐい、とアスランの腕を解くように持ち上げると振り向きざまにぎゅっとアスランを抱きしめる。ほんの一瞬だけ、力強く。

「イザー・・・」

 驚いたアスランが読んだ名前を最後まで言わせずにイザークは踵を返す。銀色の髪がきらきらと光に輝いて光の軌跡が目に見えるようだった。

「帰るぞ」

 短く告げるとつかつかと早足で歩き出すイザークにアスランは慌てて追いかける。顔を振り向けて母親の墓を見ると心の中で「また来るから」と別れの挨拶をした。

「帰るって、君は家に戻るんだろう・・・」

 隣に追いついてアスランが問うとイザークは意味深に笑う。

「帰るさ、貴様と一緒にな」

 その言葉に目を丸くしたアスランに楽しそうにイザークは口の端をあげた。それはプライドの高いイザークが見せる自信に満ちた笑み。

「どうせ寮に戻っても一人なんだろう。だったら俺の家に来て母上のお相手でもしてろ」
「そんな・・・エザリアさんは君が帰るのを楽しみにしてるんだろう?」










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