ことあるごとにいちいち自分のことを目のカタキにしているイザーク。アスランとしては面倒くさいと思う反面、どうしてそこまで気にするのかというのが疑問だった。
「イザーク、キミはトップになることが目標なのか? それとも俺に勝つことが大事なのか? どっちの方が優先なんだ?」
「そんなの決まってる、俺はアカデミーを主席で卒業するのが目標だ、貴様のことなど関係ない。貴様が俺より上にいるから邪魔なだけだ」
ふん、と鼻を鳴らしてそっぽを向いたイザークにアスランは口の端をわずかに上げて翡翠の瞳でじっと見つめる。
「ふぅん・・・。じゃぁ成績と関係ないチェスはどうなるんだい? 乗馬だって将棋だって全部関係ない勝負じゃないか」
それなのにイザークはチェスで勝つと大喜びし、負けると部屋を破壊せんばかりの勢いで癇癪を起こすのだ。成績だけのライバルというのなら遊びでそこまで騒ぐのは少々腑に落ちない。
「そ、それは・・・っ」
とたんに慌てる様子に余裕の表情でアスランは笑う。思ったとおりの反応に、いじめてやりたい気持ちにさえなってくる。
「一昨日はやけにご機嫌だったらしいじゃないか、ディアッカがいつもこうだったら助かるのに、って俺に言ってくるくらいにね」
気乗りのしなかったアスランはそれでも手を抜くとイザークが怒り出すからと、ちゃんと相手をしたのだが、前の日から体調がよくなかったこともあって前半で勝負はついてあっさりとイザークに負けたのだ。接戦だとあまり喜ばないイザークも快勝だったから随分と機嫌が良かったらしい。
ムッとして立ったまま視線だけを向けてくるのは何かを必死で考えているからだろうか。それに構わずにベッドの上に腰掛けてアスランはイザークを見上げる。
「イザークが答えられないのなら、俺が先に言おうか」
「言うって・・・何をだ」
腕を組んで見下ろしながら先を促しつつも、アスランが言おうとしていることを読もうとしているような表情に、わかりやすいな、と思う。
「俺にとってのイザーク、をだよ」
「貴様にとっての俺だと?」
「そう。キミに質問をしたんだから、僕のほうも教えておくのが礼儀かと思って」
この申し出に無関心かと思ったイザークが思いのほか反応した。「そんなものいらん」と切り捨てるかと思ったのだが、意外にも大人しく話し始めるのを待っているらしい。
「聞きたい?」
わざとそう言ってみるとカッと頬を真っ赤にしてイザークはいきり立つ。
「貴様が勝手に言ってるんだろうが!!」
それにくすりと笑ってみせて、イザークのブルーの瞳を見上げる。
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