「イザーク」
パニックになっているイザークにアスランは声をかける。声だけじゃ戻ってこないので肩に手をかけ無理矢理に顔を向かせると、イザークの顔はぐちゃぐちゃだった。涙で濡れて。
「そんなの、俺は聞いてない」
「黙っててごめん」
「議長に言われて客を迎えに来たんだ」
「ラクスにはいろいろ世話になったから事情は知ってたんだ」
「なのに俺には何も言わなかったのか?!」
ギリギリと悔しそうに唇を噛み締めるイザークの頬に手を添えて涙をそっとぬぐう。
「ただ驚かせたかっただけなんだ」
そんなに怒るとは思わなかったんだ、と申し訳なさそうに俯く姿にイザークは余計に苛立った。
「ふざけるな」
小さくイザークは吐き出すように言う。
「イザー・・・」
「俺は秘密にされるのは嫌いだ! そうじゃなくても貴様がオーブにいる間のことを何も知らないのに・・・、帰ってくることすら知らないなんて許せるか!!」
ぐっ、とアスランの手首を掴むと、捻るように押し下げる。痛みに顔をしかめつつ、アスランは何も言わなかった。
「知ってたら、ちゃんと知ってたら俺は・・・」
それきり俯いてしまう。その銀色の髪の流れに、アスランはそっと唇を押しつけた。
「知ってたら、どうしたの?」
「・・・」
「本当はちゃんと知らせようと思ったんだけど、誕生日に休暇を取ってないって言うし、態度が素っ気なくてなんか腹が立って」
少しでもイザークに余裕があったなら、素直な気持ちをアスランに伝えていたのなら、たぶんこんなことはしなかったのだ、とアスランは言った。
「仕事のことは本当だ、現に今だって忙しい。けどな、貴様だってろくに連絡もよこさないし、俺よりずっと素っ気ないじゃないか」
いつも一方的にかけてきては勝手に切ってしまう秘密裏の通信。おやすみの挨拶もさせずにいきなり切られる気持ちは寂しくて、悲しくて、つらくて。そんなことばかり繰り返されていたら素直になんてなれるわけもない。そうじゃなくてもプライドの高いイザークなのだ。殻に閉じこもったら簡単には元になんて戻れなかった。
「それは・・・悪いことをしたと思ってるよ。でもプラントに戻るために・・・イザークのところに戻ってくるためにいろいろがんばってたんだから許してくれないかな」
上から降ってくる声にイザークは瞑目した。
ゆっくり開けた視界に入ってくるのはコンソールパネルの上に置かれたIDカード。一度抹消された人間が再び取得するのはそう簡単じゃないはずだ。ラクス・クラインに世話になったというのも本当なのだろう。
アスランの言葉が頭の中をぐるぐると回る。
「事前に知ってたら、俺だって休みくらい取るに決まってるだろう! 部屋だって用意したし、命令なんかじゃなくて迎えにだって来る! だから・・・だから貴様は腰抜けだって言うんだ!!」
跳ね上げた顔のすぐ前にあったのは、嬉しそうに笑うアスランの顔。
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