あまりにも無茶苦茶で、イザークの混乱は限界を超えていた。
いきなり現れたアスランに心の準備なんてできていなかった。なのにアスランはまるでかまわずに余裕の表情で、それだけにイザークは苛立ちが堪えきれない。ポロポロと涙が頬を伝って落ちていく。
「イザーク…」
隣でアスランは困惑した顔をする。自動運転のエレカが指定した公園のパーキングに停まるとアスランは小さく息をついた。イザークも落ち着きを取り戻して軍服の袖で涙をぬぐう。
「…はぁ、参ったな…君に泣かれるなんて予定外だよ」
そんなことをいうアスランを青い目が睨み付ける。
「…プラントに戻ってきたのは、君の誕生日だからだ」
そうしてイザークの目の前に小さなカードを突きつける。
「はい、誕生日プレゼント」
イザークの目は大きく見開かれた。それは信じられない物を目の当たりにした者の表情だ。
「なん…、こ、れ…はっ?」
その顔に満足そうにアスランは笑う。
「一番君が欲しいものは何だろうって考えたんだ」
イザークは反応できない。
目の前にあるのは、『アスラン・ザラ』のプラント市民としてのIDカード。アレックス・ディノとして亡命したときにアスランとしてのIDは抹消されていたはずだった。
「一番…欲しい、だと?」
「うん」
にっこり、と笑うアスランに何も言えなかった。それの意味することは、アスランがプラントに戻ることに他ならない。
「議長に用はないだと?」
「だって用があるのはイザークにだから」
またにっこり。
逆にイザークの顔は怒りで真っ赤に染まる。
「ふ、ふ、ふ、ふざけるな!!」
「ふざけてないってば」
聞いてない。
こんな話聞いてなかった。アスランがプラントに戻るなんて。
ふと、イザークはラクスの話を思い出す。誕生日に予定はないか、と確認していた彼女。今日、アスランがプラントにやってくるのを知っていたのなら、あの時点で事情を全てわかっていたのだろう。結局自分はまんまと嵌められたのか?
-7-
NEXT
BACK