悔しかったけれど。
 不本意ではあったけれど。
 やっぱりアスランが戻ってきたことは何よりイザークには嬉しかった。

「イザーク・・・」

 解かれた手でそっと銀色の髪を掻き上げて、そのまま頬を包み込むと白い頬が朱に染まる。
 それに目を細めながら近づいていくと、長い、繊細な作りの睫毛がゆっくりと降りた。
「誕生日・・・おめでとう」

 そして甘い口づけが交わされて、イザークはアスランの腕の中に抱かれる。
 ぎゅっと押しつけられた額に小さく苦笑して優しくその銀糸の輝きごと包み込む。

「このバカ・・・ッ」

 ぐっとアスランの服の袖が握られる。

「うん、馬鹿だったよ」
「もう地球になんて行かせないからな」
「大丈夫、行く用事なんてないから」

 そうしてしばらく二人は抱き合ったままだった。
 久しぶりに肌に感じるぬくもりを確かめるために―――。


「ねぇ、イザーク」
「なんだ」

 顔を上げずに聞き返す声にクスリと笑うとアスランは無邪気に訊ねた。

「『部屋を用意する』って言ったよね? それってもちろん二人で住む部屋だよね?」

 にっこり。

「そ、それは・・・!!」

 あわてふためいて顔を真っ赤にさせているイザークを後目に、アスランはご機嫌だ。
 あちこちボケているくせに、相手の弱みは絶対に見逃さない。それこそがアスラン・ザラだった。

「じゃあこれから部屋を探しに行こうよ。イザークの職場に近い方がいいよね」

 さっそくエレカの行き先を設定するアスランにあわてたイザークがその身体を押しのける。

「俺は仕事の途中だ!調子に乗るな!!」
「大丈夫、ラクスには休暇にしてくれ、って俺から言うから。それより積極的だね、イザーク」

 押しのけるついでに勢い余って押し倒す格好になったイザークに、下敷きになったアスランが言うとますます顔を赤くしてイザークが飛びのいた。その拍子に天井に頭をぶつけて派手な音が響く。

「あぁ、イザーク、気をつけてよ。まったく俺がいないとダメだな」
「か、か、勝手なことを・・・っ」

 もうめちゃくちゃになっているイザークの手を引くとあっけなくその体はアスランの腕の中に収まった。そしてその隙を見逃さずにアスランはもう一度唇を奪う。
 
 コンソールの上からは真新しいIDカードが滑り落ちた。

 白い軍服の腕が助手席へと伸ばされる。

 そして―――。
 やわらかく射し込む午後の日差しに、一つになった長い陰はいつまでもずっと重なったままだった・・・・・・。


 心から君に。
 ハッピーバースディ―――。

 



 




 



Happy Birthday Yzak !!

2006/08/08






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