「やっぱり! 迎えがいるって君のことだったのか」
駆け寄ってくる人の姿は記憶のそれと変わらない。藍色の髪とエメラルドの瞳。
「アス、ラ…ン?」
「久しぶり、元気だった?」
にっこりと笑うアスランはまるで屈託がない。一方のイザークはなんでこんなところにアスランがいるのかということに頭が混乱していた。
「貴様、どうしてここに…?」
「ラクスから聞いてないの? だって君が迎えなんだろう?」
迎えという言葉にイザークは自分お仕事を思い出す。
「確かに議長から人を迎えに言ってくれとは言われていたが、それが、アスラン…?」
謎だらけの顔をするイザークにアスランは状況を理解する。ラクスが仕掛けたことらしい。
「そういうことなら間違いなく君は俺の出迎えだよ」
ラクスというキーワードと、行けばわかるという説明の仕方。たしかにアスランならイザークを見つけられないなんてことはないだろう。
「だからってなんで、貴様だというのを黙って…」
わざわざ秘密にする必要などあるとは思えない。いや、もし驚かせることが目的なのだとしたら十分にそれは成功しているのだが、そのために半日近く待たされていたとすればイザークとしては納得がいかなかった。
「さぁ。ラクスの考えることだから」
そういって当然のようにイザークの手を取って歩き出そうとするアスランに、あわてて待ったをかける。
「離せ!」
「どうしたの?」
不思議そうな顔をしているアスランにイザークは手をふりほどく。私服ならまだしも軍服を着ているときに男と手をつなぐなんてできるわけがない。軍人を辞めたらそんなことすら忘れたのだろうか、アスランは。
「どうしたの、ってこんなところで手なんてつなげるか!」
「あぁ、そうか。悪かったよ。で、車は?」
当然のようにイザークの乗ってきた車に自分も乗るつもりのようだ。ふざけるな、と怒鳴りつけそうになるのをどうにか押さえて、渋々とパーキングにある車へと案内をする。今は議長の客なのだから、と自分に言い聞かせて。
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