「イザーク、明日は休むんだろ」

 帰宅した議長を見送ってジュール隊の執務室へ立ち寄ったイザークへディアッカが声をかけてきた。
 
「休む?」

 議長の警護役でありながらイザークは現役の隊長だった。警護役への選任にあたりその経歴が買われたのだが、強く固辞するイザークを説得するためにラクスが提案した条件が隊長との兼務だったのだ。情勢が落ち着くまでという期限付きにイザークはしぶしぶ承諾し、その間ジュール隊は地上勤務となっている。
 
「あれ違った?」
「貴様の勘違いだろう。休む予定などないぞ」

 公的な場を除いてはいつまでたっても議長とは言わずに名前を呼び続けるディアッカに眉をひそめながらイザークは部下を睨んだ。
 
「なんだ違うのか。ま、休みたくなったら休めるから遠慮するなよ、お前、誕生日だろ」

 言われてイザークははっとする。いっそ言わないでいてくれたほうがよかった、と一瞬思ったほどきれいに忘れ去っていた。
 
「仕事がある、休んでられるか」

 短くイザークは言って部屋を出て行こうとする。あのときのラクス・クラインも同じようなことを言っていた。どうして自分の周りには誕生日にうるさい人間ばかりなのだろう。そんなの一年の中のただの一日なんだから放っておいてくれ、と内心で思いながら。
 
「アスランとは連絡取ってるんだろ?」

 その背中に向けてディアッカは尋ねる。それは確信めいた問いだった。
 
「…貴様には関係ない」

 動揺して表情の変わる顔を見せずに済んでよかった、と思いながらもイザークは興味のない振りをする。
 そう、アスランのことなんて関係ない。ディアッカにも、自分にも。
 
 
 
 
「は、客人の迎えですか?」

 画面の向こうの評議会議長はにっこりと笑って大きく肯定している。

『えぇ、地球からのお客様なんですの』

 朝一番に通信が入ったと思ったらその相手はラクス・クラインで、仕事を頼みたいのだという。

「しかし、それでしたら私の他にも適任者はあるかと思いますが」

 客の出迎えくらいにわざわざ自分が行く必要があるとは思えない。 

『あなたでなくては駄目なのですわ』

 きっぱりと言い切る少女に疑問を感じながらもイザークは渋々うなずき、軍服を手に取った。








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