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その二日後。
「よかったねー、隊長ぉ」
デスクでPCのモニターを覗き込んでいるイザークに向けてディアッカは開口一番そう言った。そちらに一瞬ちらりと視線を向けると、そのまますぐにモニターに視線を戻す。
「なんのことだ」
白々しく言う隊長に副官はニヤニヤと笑う。
「見たんだろ? アスランの特務隊での復隊、って告知」
ZAFTの全軍連絡用の掲示の隅に人事の記事として、アスラン・ザラの特務隊配属が掲載されていたのだ。イザークは知らぬ顔をしてモニターを見ているが、その顔はごまかしようもないくらいに嬉しそうだった。
「残念だったな、ジュール隊じゃなくて」
それどころかフェイスというのは一部隊の隊長よりも階級は上で、ことと次第によってはイザークがアスランの指揮下に収まるということすらありえるのだ。
「知るかっ」
イザークは小さく舌打ちするが、その顔はやっぱり嬉しそうだった。
「よかったな」
「何がだ」
「アスランとまたZAFTで一緒に戦えて」
ディアッカの言葉にイザークは軽く目を見開くと、ふん、と鼻を鳴らして顔を背けた。
「別に・・・関係ない」
イザークがアスランに戻ってくるように説得したのは、何より同じZAFTに所属して再びアスランと道を歩みたかったからじゃないだろうか、とディアッカは思っていた。自分が所属しているZAFTにアスランが戻ってくることでまた共に戦うことができる。それはイザークの密かな願いなのかもしれない。イザークは融通が利かない性格だから、議長への恩義を感じてZAFTに残ったからにはそう簡単には抜け出すことなどできるはずがなかった。けれど本当はアスランみたいに身軽になることができたら、誰よりも真っ先にZAFTを抜け出てしまったかもしれない。ライバルであるアスラン・ザラの隣にいるために。
「ふぅん・・・」
興味なさそうに振舞っておきながら、ディアッカはイザークのデスクに歩み寄ってちらりとそのモニターを確かめる。やはりそこには人事の掲示がしっかりと表示されていた。 それに内心で笑いながら、けれども澄ました顔のままディアッカは仕事に戻ろうと自分のデスクに向かいかける。
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