「あ、そうだ」

 そう言うとモニターに向き直っていたイザークの手が動く前にさりげなく告げる。

「アスランはもうプラントにはいないぜ」

 さりげない言葉だったが予想以上の効果だった。

「なんだとっ?!」

 視線を落としていたモニターからはじかれたように顔をあげて、イザークはディアッカを見る。その仕草がイザークが何をしようとしていたのかを推測させてディアッカはおかしく堪らない。

「ミネルバに向かってるらしいぜ、新型機で」
「貴様がなんでそんなこと知ってる?」

 悔しそうに顔をゆがませるその意味は、きっと先を越されたディアッカに対するものと、自分へと連絡しないで地球へ降りてしまったアスランに対するものなのかもしれない。見る見る白い顔が真っ赤に染まる。

「ちょっとね、隊長が連絡を取れって言い出すんじゃないかと思って調べたんだよ」

 まさに図星をさされた風に口をつぐむイザークにディアッカはニヤニヤと隠しもせず笑った。案の定イザークはアスランへと連絡を取るつもりだったのだろう。どうしたものかと思案する顔にディアッカはついでとばかりにイザークに向いた。

「メルアドは前のと変わらないし、ミネルバに着くのはあと6時間後くらいだから、通信をいれるならその後だな」

 ディアッカの言葉にイザークは今度こそ言葉に詰まって、嫌に優秀すぎる副官をにらみつけた。

「余計なことばかりしてないで、とっとと仕事しろ!」

 ついに怒鳴りつけたイザークにディアッカは楽しそうにして笑いながら「はいはい」と言って席に着いた。

 アスランが戻ってきた。
 そのことを改めて実感したイザークは、自然と笑ってしまいそうになる顔を押し留めるのに必死だった。今は地球に下りているとしてもミネルバは宇宙向きの戦艦だ。そう長くあの星にとどまるとも思えない。宇宙にあがって来たならすぐにでも連絡をとってやろう、とメールソフトを立ち上げて、今までずっと削除しなかったアスラン・ザラのZAFTのメールアドレスを確認した。

「おい、ディアッカ」

 不意に声をかけられて、作業に戻っていた副官は顔だけを上官に向ける。

「何?」
「ミネルバが宇宙に戻ることになったら俺に知らせろ」

 偉そうに言うイザークの言葉にディアッカは噴き出しそうになりながらなんとか平静を装って頷いた。
 
「りょーかい」

 明らかに上機嫌で仕事に戻るイザークをみながら、「また二人の間で面倒くさいことになんのかな、俺」とディアッカは思っていたが、それはイザークには関係ないことだったし、なおさらアスランは知る由もないことだった。





fin.



2006/05/15

アスイザ好きさんに28のお題
 NO.15 「ZAFTで」






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