「その辺は定かではないがな。俺は監視というのはないと思うぞ。正体がバレるリスクを犯してまで一人の人間につきっきりでいるほどのメリットはないからな。会ったことのない人間に出会って心が動かされたんだろう」
フッと小さく笑うイザークの顔は、炎の照らすオレンジと雪のような白い肌があいまってひどく綺麗だった。
「あぁ、それなんか分かるかも」
出会ったことのないものに出会って心を奪われるというのなら、まさに自分にとってのイザークは雪の妖精のように綺麗でであったことのない存在だったのだから。
そしてがっちり心を奪われてしまったままずっと傍にいる。
「分かる? 雪女の気持ちがか?」
理解できないような顔をしたイザークにディアッカは半分頷いてみせる。
「人間に出会って心動かされるってことがね。雪女の気持ちは半分わかるけど、でもオレはやだね、秘密を守れるかどうかずっとチェックしてるなんて」
「ああそうだな。そんなことに何年も時間かけるくらいなら、鎌かけて大丈夫かどうか試してやればすぐに済む話だ」
イザークらしい言い方に今度はディアッカが笑った。
「そうじゃなくて・・・」
言うと離れて座っていたディアッカがイザークに近づいて座りなおす。
「夫婦として暮らすくらいに好きになった相手だったらさ、自分にだけは秘密を話して欲しいと思わない?」
覗きこむアメジストの瞳が炎を映してイザークを見つめる。それにイザークは「ふん」と鼻を鳴らした。
「よくそんなことが言えたな! 朝からずっと黙り込んでた奴が」
雪が苦手だということをこの場までずっと黙り続けてきたディアッカにイザークがチクリと一刺しする。
「あぁ、だから、悪かったって・・・!」
どうやらイザークの機嫌の悪さは想像以上のようだった。確かに自分がイザークの立場だったら早いタイミングで打ち明けてもらったほうがあれこれ対策も立てやすいだろうし、何より精神的にすっきりするはずだ。イザークの性格からしたらここまで何も言わないでいたことだけでもたいしたことなのかもしれない。
「明日はちゃんとやるからさ」
「当たり前だ、お前のせいでアスランの奴に負けたらタダじゃすまないからな」
本気モードで怒りかけたイザークを強引に抱き寄せてディアッカは黙らせる。すると突然イザークは立ち上がった。
7
⇒NEXT
BACK←