◆◆◆
ドアを開けてからさっきまで自分が泣いていたことを思い出した。けれど、どうしようかと思ったのは一瞬で、ベッドの上のイザークをみたら自然と足が動いていた。
下を向いてシーツを握り締めるイザーク。
悔しがって手もつけられないほどに荒れているかと思ったのに、そんなことにはなっていなかった。傷が痛むのかもしれない。イザークの怪我は顔面の裂傷だけだと聞いていたけれど、心配なのには変わらない。
「顔が・・・熱い・・・」
「もうすぐ・・・点滴が効いてくるよ」
そう、点滴が効いてくれば痛みも治まるから。
シーツを握り締めるだけじゃ足りなくて、形の良い唇をギリッと噛み締めてしまうイザークに指先でそれを制止する。
「噛んじゃだめだよ」
言われて、青い片方だけの瞳が射抜くように睨みつけてくる。その強い視線も一瞬で、すぐに驚愕の色に染め替えられた。
「ディアッカ、お前・・・」
その表情を見て自分は失敗したんだと気がついた。確かに廊下に出るときには涙は止まっていたはずなのに。
震え出しそうな手でイザークの体を抱きしめる。肩口に額を押し付けるようにして、ぴったりとその体温を感じ取るように。ぬくもりと鼓動と息遣いと。いまここにある全てがいとおしい。
「・・・怖かった」
洩らした声にイザークが驚いているのがわかる。本当に怖かったのはイザーク自身なのかもしれないのに、こんなことをいうなんて全くどうかしているのかもしれない。
「煙あげてるデュエルをみたとき、イザークが死ぬんじゃないかって思ったら、もうわけわかんなくなった」
8
⇒NEXT
BACK←