ザァザァと打ち付ける温水がまるで温かく感じられない。それでも水量を最大にとコックをひねる。
 医務室を訪れたディアッカとニコルは治療中という理由で門前払いを食らった。命に別状はないという説明だけは何とか聞きだして、シャワールームに向かい無言のままブースに入った。
 頭が真っ白だった。
 自分は今日まで、今まで何を見てきたんだ。ミゲルだってラスティだってもういないじゃないか。あのときに戦争をしているんだと身をもって感じたと思った。確かにそれは嘘じゃなかった。だけど、この感覚は何なんだ?
 フラッシュバックするのは、ストライクのかざすまばゆい光。スローモーションのように軌道がはっきりと読めるのに、自分の手は間に合わない。デュエルに肉薄する刃がはっきりと見て取れる。息を呑むと同時に爆発が見えて、ストライクが退くのがわかる。
 スピーカーから聞こえるイザークの声。ニコルが撤退を促して、動かないデュエルを抱きかかえた。通信の声が返って来ない。うめくような低い息遣いだけがイザークの命が助かったことを伝えて、ただそれだけが頼りだった。
 ぞっとした。
 背中を流れる温水がまるで冷水のように思えた。たまらなくなってシャワーを止めると体を拭くのもそこそこにアンダーにもどかしく袖を通し、そこを飛び出した。
 
 真っ暗な自室に今は一人だった。
 同室者のイザークは医務室で治療を受けている。命に別状はないという医者の言葉に嘘はないだろうが、あの流れる血液の量からして軽い怪我ですまないのは確かだ。
 あの傷が急所だったら? 出血がもっと多かったら? 一撃でコックピットがやられていたら?
 噴出す冷たい汗にゴクリと喉を鳴らした。
 
 
 
   
 
 
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