「なぁ、ニコル」
「なんです、ディアッカ」
「ヘリオポリスで全部終わるんじゃなかったのかよ」
モルゲンレーテで秘密裏に製造された5機のXナンバー。それを強奪し、連合の勢いを削いで一気に戦局を優位に運ぶ。そのための作戦にエリート集団であるクルーゼ隊が選ばれた。それで全てが上手くいって戦争はすぐに終わるはずだった。
それなのに。
座り込むディアッカの背後でやかましいほどの怒鳴り声と修理のための金属音が鳴り響く。勝ち続けることだけが約束されていたはずの自分たちが味わう屈辱の音だった。
たった一機奪い損ねた機体が自分たちを翻弄している。機動力のない足つきだけだったらここまでのことにはなっていなかっただろうとわかるから、なおさらにあのトリコロールの機体が忌々しい。
ましてやイザークに怪我を負わせたともなれば。ナチュラルが操る機体に自分たちが束になっても敵わないなんて信じたくなかった。
「状況は常に変わります。過去のことをあれこれいうなんてあなたらしくないですよ。まだ終わっていないというのなら、終わらせるようにするだけです。僕たちはそのためにここにいるんですから」
年下だといつもバカにしていた少年の言葉で、今の自分の不甲斐なさに気づかされた。
落ち込んでいる場合じゃない。まだ終わったわけじゃない。
「イザークの様子を見に行きましょう」
視線をあげたディアッカにニコルが声をかけてくる。気を取り直すように立ち上がるディアッカは視界の角にデュエルの機体を捉えた。胴の部分に受けた損傷が生々しい。あと数メートル位置が違っていれば間違いなくコクピットは直撃を受けていただろう。知らず掌に汗をかいてグローブのままぎゅっと手を握る。
とても嫌な感触だった。
5
⇒NEXT
BACK←