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動かないデュエルを抱きかかえるようにして、帰投するまでのことはよく覚えていない。バスターをハンガーに収めるのももどかしく、ハッチを開けてデュエルに飛びついた。
足元で整備士と隊員の怒号が聞こえる。
早くコクピットを開きたいのに、外部パネルを外そうとする手がガタガタと震えてままならない。
「イザーク・・・っ」
悲鳴に近く名を呼びながら、漸く熱に溶けたハッチをこじ開けると、バイザーにひびの入ったイザークの姿。ひびの上から顔を覆うイザークは、苦痛に声を上げている。
「っっ、痛い、痛ぃ・・・・・・」
真っ赤な、顔面に流れる血がやけに鮮やかでディアッカの視覚に焼きついた。壊れた計器がアラームをあげる狭いコクピットからイザークの体を引きずり出すようにして抱きかかえ、降りた先に待つ担架にその体を横たえた。下手にヘルメットを外すと怪我に影響するかもしれないから、血にまみれたヘルメット姿のままイザークは医療班に連れ去られるように運ばれていく。
脱力したディアッカはその場に崩れるように膝をついた。
「ディアッカ・・・」
遅れて着艦したニコルがそんなディアッカに駆け寄ってくる。
「イザークは?」
心配そうに声をかける。イザークの怪我とディアッカの姿の両方を気遣うそれに、いつもの皮肉で返す余裕はまるでなかった。
「外傷は・・・顔面だけだと、思うけど・・・よくわかんねぇ」
身体的な外傷は抱き上げた時点ではなかった。
けれど、ヘルメットが壊れていたのが気にならないわけじゃない。頭部に傷を受けたということは脳へのダメージも考えられる。
そして何よりイザークが受けた精神的なダメージも。
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