見間違いかと思った。
目の前の顔が信じられなかった。
これが、あのディアッカなのか、と。着ている軍服も肌の色も髪の色も、まるきりそのままディアッカ以外にありえないのに。
頬が濡れて、いた。
泣いているんだと理解するまで、イザークの優秀な頭脳はしばらくの時間を要した。
それくらいに不似合いな、見たことない光景だった。
アメジストの瞳を囲んで赤く腫れた目が、もう随分泣いていたことを示している。目尻には涙が流れた跡がにじんで、長い睫毛を濡らしていた。
目の前で、瞬きをするとポロポロと大粒の涙が、落ちる。
「ディアッカ、お前・・・」
泣いてるのか、と聞こうとしたイザークに、ぎこちなく微笑んでディアッカは抱きしめた。
腕を通して伝わるぬくもり。
確かに生きているという証。
傷のせいで高めの体温も、少し荒い呼吸も、すべてがいとおしかった。
「・・・怖かった」
小さく届いた声は、イザークに痛みを忘れさせるには充分だった。
まるで小さな子供が怯えるような声音に驚きを隠せない。いつも飄々としてふざけているばかりの奴が心底恐れているようにして、抱きしめるというよりは抱きつくみたいな抱擁をしている。そのことが信じられない。
「煙あげてるデュエルをみたとき、イザークが死ぬんじゃないかって思ったら、もうわけわかんなくなった」
蘇る感覚に口の中が乾いてくるのを感じて唾を飲み込む音がやけに耳障りだった。
3
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