「謝るな。別に、お前が悪いことをしたわけじゃない」

 喋りながらもイザークは痛そうに口を押さえている。

「あぁ、もうごめん! ちょっと待ってて」

 言ってバタバタとディアッカはキッチンに向かっていった。

「とりあえず、これ飲んで」

 本当は軟膏を処方してもらうのが一番いいのだろうけれど、こんな時間にそれは難しい。ディアッカが持ってきたのは沁みない程度に冷ましたレモンティ。

「ビタミンC摂って」

 本当はサプリメントがあればいいのだが、そういうものは職場で仕事片手に摂ることが多くて家にまでは置いていなかった。
 大人しくカップを受け取ったイザークは、十分に冷まされた琥珀色の液体を口にする。けれど、やっぱりそれは炎症には沁みて、大好きな紅茶を味わえずにイザークは口を尖らせてしまった。

「う・・・ごめん」

 そんな態度をされてはディアッカはひたすら謝るしかない。大きい体を小さくしているディアッカにイザークはおかしくて肩を震わせる。いきなり笑い出したイザークにディアッカはきょとんとして顔をあげた。それにヒラヒラと手を振ってイザークは口内炎を庇ってぎこちなく笑う。

「もういい。それより、今日は早く寝るぞ」

 睡眠不足が原因というのなら少しでも早く寝るまでだ。軍人として、部下を持つ隊長として健康管理を怠ったとなっては示しがつかない。

「うん、わかった。でもちょっとだけ・・・」

 言うとディアッカはイザークの体を正面からぎゅっと抱きしめる。体の温度が伝わって、抱きしめたディアッカよりも抱きしめられたイザークがほぅっと息をついた。

「もう少ししたら、落ち着く」

 仕事が落ち着いたら時間を取ることも出来る、と言外にそう告げたイザークにディアッカは頷いた。

「そうだな、まずはイザークの口内炎を治さないと、キスもできないんじゃ仕事もやる気にならないし」

 不謹慎な態度にディアッカを睨みつけるがイザークの腕はディアッカの首に回されたままだった。



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