Orange Day
 キスをしようとしたら思い切り拒まれた。
 なんでだと思ってイザークを見ると、口元を隠すようにして視線を避けている。

「イザーク・・・?」
「口の中が・・・痛い」
 
 思いもよらない理由に慌てて口元に手を添えると、それさえ痛がってイザークは顔をしかめる。

「怪我、なんてしてないよな」

 特に顔を傷めるような怪我は今日一日を振り返ってもなかったはずだ。第一、口の中を傷めるほどの怪我ならば、イザークの顔は派手に怪我しているだろう。

「違う、そうじゃなくて、口の中が・・・」

 言いながら喋ることさえ億劫そうにディアッカを恨めしそうに見る。心当たりがまるでないのにそんな顔をされてディアッカは居心地が悪くなった。

「口の中・・・て、まさか口内炎?」
「口内炎?」

 聞きなれない言葉にイザークはそのまま聞き返す。コーディネーターは多少の不調はナチュラルを上回る自己治癒能力が働いて表に出てくることはない。

「ビタミン不足とか睡眠不足とかが原因っていうけど・・・・・・」

 言いながらディアッカは思い当たって罰が悪そうな顔をする。
 このところ、イザークは忙しかった。それはディアッカも一番近くで見ているのだから当然知っていた。それなのに部屋に帰るとイザークを求めてしまう自分を抑えられなかった。それはイザークも同じだったから、つい止められなくて明け方近くに眠りに入る日も何日かはあったのだが。

「ごめん!」

 ディアッカはソファの上にぺたりと額を押し付けた。

「ディアッカ?」
「オレが一番イザークのこと気遣ってやらないといけないのに・・・」

 睡眠不足という言葉とディアッカの態度で、なんとなくイザークにも理由がわかった。 だが、別にディアッカが一方的に無理強いしたというわけではない。




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