「うーん、どうしようかな」
ディアッカは首をひねっている。まだ決めかねているらしい。
「絞れないなら両方買えばいいじゃないか」
思わぬ声にディアッカは目を見開いた。
「両方って」
「用途は違うんだろう、だったら使い分ければいい話なんじゃないのか」
「・・・くっははは!さすがイザークだな、なるほどそれも一つの方法だな」
エレカを二台買うなんて普通は思いつかないだろう。だがイザークはきっと今までそういう風に育ってきたのだ。目的が違うのならば二つ揃えるのが当たり前だというように。
「けど今回の予算は一台分だから」
そうしてディアッカは腕を組んでしばらく考え込んでいたがどうやら決めたらしく顔をあげてイザークをみた。
暇をもてあました友人は店員がサービスした紅茶をソファで飲んでいる。
「あっちにする」
「スポーツカーか」
「うん、やっぱりかっこいい方がいいし、二人乗りでも十分かなって思ってさ」
悩んでいる理由はそれだった。スポーツカータイプコンパクトなは二人乗りで荷物も大して載せられない。だがSUVは逆に大きすぎて街を走るにはいまいち小回りが利かないという相反する売りがネックにもなっていた。
「お前のうちには他にエレカがないわけではないだろう」
「まぁそれもそうだ。イザークが乗れれば困ることもないしね」
そういうとディアッカは店員に向かって話しかけ、あれこれと注文をつけながら必要な手続きをし始める。
「お前の名義なのか」
「そう。誕生日だからね」
今の学校にまじめに通うようになってディアッカと父親の関係は最悪な状況は脱したらしい。詳しい話は知らないがそんなようなことを言っていた。車を買うにはさすがに小遣いじゃ足りないだろうから父親の許可を得て買うということなのだろう。名義がディアッカのものならばプレゼントなのかもしれない。イザークは店員にサービスされた紅茶を飲みながらそんな風に友人のことを分析していた。
「イザークは紅茶でいい? 他に何か頼む?」
「さっきの店で紅茶は飲んだからな・・・カフェオレにするか。お前は何か食べるのか」
必要な手続きを全て終えて二人は近くのカフェで休むことにした。とはいってもイザークはずっと見ていただけだからお茶が続いているのだが別段文句を言うわけでもない。ディアッカが見たところでは、こういう普通の経験も必要なのだと思っているらしい。
「ちょっと甘いものでも食べようかと思って・・・」
「甘いもの?」
閉じてしまったメニューを開きながらイザークは尋ねる。
「うん。がっつり食べるにはちょっと時間が遅いだろ。エザリアおばさんの手料理食えないのはやだし。だから軽く甘いものをさ」
育ち盛りのディアッカは一日4食が基本だ。昼食の後、おやつというにはしっかりとしたパンをいくつも食べて、その上でジュール家の夕食を平らげる。もちろん食後のデザートもだ。だが今日は時間が随分遅くなっていたから、おやつの量を減らすということらしい。ここで空腹に任せて食べすぎないところはセルフコントロールができているとイザークは友人を評価している。そのイザークが開いたデザートのページにはパンケーキからアイスクリームまでさまざまなものが載っていた。
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