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「で、イザークはどう思う?」
授業を終えた放課後、いつものように二人で校門を出て向かったのは一軒のカーディーラーだった。イザークはディアッカに行き先を聞かされて文句をいうわけでもなく付いて来た。そもそもカーディーラーなんてこのご時勢、お抱え運転手のいるお坊ちゃまには相当に縁のない世界だろう。
「どうと言われてもな」
展示されている車を一通り見比べてからディアッカはイザークに尋ねた。
先週無事にライセンス試験に合格した友人はさっそく自分のエレカを購入すべくその下見にやってきたというわけだ。なんだかんだ言ってもディアッカの家もかなりな富裕層なのには違いなくて、やってきた店も一般人は近寄らないレベルの店らしい。車の適正な値段なんて知らないから表示されている金額が高いのかそうじゃないのかは見当もつかなかったが、店内の調度品もイザークの知る限り高級ホテル並みの上質さだった。
イザークの返事は予想の通りにそっけない。そもそもイザークが店に一緒に来たこと自体がディアッカにしては上出来だった。
「興味ないやつにはつまんないか。オレは昔っからほしくて仕方なかったからすっげーわくわくしてるんだけど」
そういいながらディアッカは二台の車を行ったりきたりしている。二人乗りのスポーツカータイプとSUVタイプ。どうやら候補はその二台に絞り込まれたらしい。
「珍しいやつだな、エレカがほしいなんて」
「そう? イザークだって小さいころは車のおもちゃとかで遊ばなかった?男の子は乗り物好きっていうのはDNAのレベルからの常識だと思うけど」
聞かれると確かに乗り物のおもちゃで遊んだ記憶はある。だがイザークに与えられたおもちゃのなかに車はなかった。
「俺のお気に入りはシャトルだったぞ」
イザークの母親は宇宙工学の権威だ。息子に与える遊び道具がそういったものなのも自然なことだろう。
「なるほど。エザリア小母さんは宇宙の人だもんな」
宇宙の人、という言い方にイザークの表情は微妙な反応になる。
「あ、変な意味じゃなくて宇宙が考えのベースにあるってことだよ。スケールが大きいとかそういう」
「慌てなくても別に悪い意味だとは思っていない。ただお前らしい言い回しだと思っただけだ」
最初のときにイザークの母親を悪く言ったときに蹴り飛ばすと宣言をされているからディアッカはそれについては気を遣うのだ。
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