「結局食べちゃったな」
テーブルの上にあった料理はディアッカはもちろんイザークも相当の量を平らげてそのほとんどが片付いていた。半分くらいはイザークの食べたこともない料理があって興味本位で食べてみたというのも大きかったらしい。
「おいしかった、ご馳走様でした。おばさん、イザークありがとう」
こんなに楽しい誕生日は初めてだとディアッカが言うと、エザリアはそれに喜びながらコーヒーを持ってくるようにメイドに指示をした。
「まだ終わりじゃないわよ」
そう言ってイザークを見る。促されたイザークはなにやら席を立ってキッチンへ向かった。
「え、何かまだあるの?」
コーヒーがテーブルの上に並べられたころ、やっとイザークが戻ってきた。トレイを手にし、その上にはなにやら小さなカップが並んでいる。
無言のまま、ゲストであるディアッカの前に最初にそれがおかれた。
「終わりじゃないって、デザート、これ・・・」
白い陶器のカップがおそろいの皿の上に置かれている。その表面はあめ色に照り輝いていて香ばしい焦げたにおいが立ち上った。
「誕生日ケーキも考えたんだけれど、全部好物にするんだってイザークがね」
クスクスと笑いながらエザリアは目を細める。それからカップの中身と息子の顔を見た。
「上出来ね、昨日よりずっといい焼け具合だわ」
「5回もやれば誰だってこれくらいできます」
ほめ言葉に不満顔で答えながらイザークが席に着くと、まっすぐにディアッカを見て言った。
「俺は小さいころ、いつも母上の手作りのケーキでお祝いしたんだ。だからデザートは手作りにしようと思ったんだ」
「まさかこれ・・・」
イザークの言葉と二人のやりとり。
それでディアッカはこれがどういうものなのかがわかった。
「キッチンに立ったこともないのに自分で作るんだって言い張って、大変だったのよ」
母親の言葉に少しだけむっとしながらイザークは言う。
「味は保証できないかもしれないが、俺の手作りだ、味わって食べろよ」
カップの中はひんやりとしたカスタードクリームとカラメリゼされたデザート。
確かにクリームブリュレは大好物だと話したけれど。だからって、それを・・・。
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