ふわり、と一瞬高く持ち上げられてから、糊の利いたシーツの上にイザークの体は横たえられる。ふと見上げた頭上で、ブラインドが開いたままになっていた。
「ブラインドが…」
 明るいところで、ましてや外光の入るベッドで抱き合うなんて今まで経験したこともないし、今だってしたくもない。イザークが抗議しようとするとディアッカはするっと隣に滑り込んで耳元でささやいた。
「最後くらい明るいところでイザークのこと愛したい」
 ジン、と低く鼓膜に響く声音にイザークのわずかな抵抗はあっさりと溶けて消えてしまう。予想以上に自分が感傷的になっていることに小さく苦笑しながらそっと腕を回してディアッカの首に絡みつくと、イザークは問いかけた。
「なんでこの期に及んでいきなりやる気だしたんだ? 今までだって散々言ったってやろうとしなかったのに」
 イザークは覗き込むようにしてディアッカの瞳を見ている。その瞳はいつもまっすぐに物を見ているイザークの、イザークそのもののブルーでとてもキレイだった。
「そうだな・・・、オレもダイアモンドになりたくなったから」
 腕の中にイザークを閉じ込めて抱きしめながらディアッカは答える。
「ダイアモンド?」
「そう。イザークはなんかさ、いつもキラキラしててまぶしいくらいきれいなんだよ、オレにとっては。あと、お堅いところもダイアに似てるかな」
 堅物扱いされて少しムッとしたイザークに微笑みながらディアッカは続ける。
「でね、ダイアモンドを磨くのってダイアモンドにしかできないんだって。世界一硬い鉱物は同じ硬さを持つものじゃないと負けちゃうんだよ。大きくて綺麗なダイアモンドの宝石を作り上げるのには、表にはでてこないダイアモンドの存在が必要なんだ」
 おとなしく話を聞いていたイザークは、その内容に徐々に表情を和らげ始める。
「イザークはさ、この先きっとどんどんエリートとしての道を突き進んでいくんだろうなと思ったら、一緒にいるなら自分にも同じような立場が必要なんだろうなって思って」
 まさしく切磋琢磨の言葉そのものを言うディアッカは、ふっと目を細めてイザークを見つめる。
「だからやる気を出したっていうのか?」
 傍にいるために、必要な力を手に入れようと。自分よりも広くずっと先を考えていたディアッカに驚かされながらイザークはディアッカの頬をつねる。
「だったらなんで最初からやる気を出さないんだ?!」
 痛みに顔をしかめながら、苦笑してディアッカはその手を包み込んだ。
「だっていつもまじめで一生懸命ってオレのキャラじゃないし。火事場の馬鹿力みたいなのは一度くらいが限界でしょ?」
 あくまで茶化して言うディアッカにイザークはあきれて小さく息を吐いた。






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