----ずっと傍にいる。
それがどれほど現実性のあることなのか自分たちにもわからない。戦況が日一日と緊迫してくる中で戦場に出て行くのだ。明日をも知れない命といっても過言ではないだろう。だから傍にいるという言葉を確かめる機会なんて、つまり同じベッドで寝ることなんてもう叶わないことなのかもしれないとディアッカは言うのだ。
それにイザークはしばし黙った後に口を開いた。
「そんなの気持ちの問題だ。もっともお前みたいな浮ついた奴には気持ちなんて掃いて捨てるほど控えがあるんだろうから、それこそ意味がないかもしれんがな」
ふん、とイザークは鼻を鳴らして横を向く。
それにディアッカは小さく笑った。
「掃いて捨てるほどあったら、条件クリアに必死になる必要なんてないでしょーが。それこそ捨てればいいんだから」
ね、とウインクして抱きしめるディアッカにイザークは興味なさそうに横を向いた。
「・・・で、どうすればいいんだ?」
声だけでイザークは聞く。
ディアッカが条件をクリアできたら、最後に部屋で愛し合うというのも約束の内容に含まれているのだ。クリアできなかったらそれきり二度とキスさえしない、とイザークは言い張っていたのだが…。
照れと抵抗とほんの少しの緊張を必死で隠して約束を果たそうとするイザークにディアッカはゆるく笑う。
「別に、何もしなくていいよ、いつものままで」
言いながらディアッカは背中からイザークを抱きしめた。腕ごと抱き寄せられて一瞬イザークの体に力が入る。
「力、抜いてよ…」
耳元で低く囁かれて、イザークは背中に電流が走ったような錯覚に陥った。
「…っ」
すぐ目の前の真っ白な耳が赤く染まるのを見てディアッカはクスリ、と笑う。そして次の瞬間、イザークをいきなり抱き上げて振り返った。
「このベッド使うのも最後かな」
ほんの少しだけ感傷的になりながら、らしくないディアッカの様子に腕の中から見上げながらイザークは、改めて気づかされた別離の時を思って一瞬目を見開き、それからぼそりと告げる。
「なら、いい思い出にでもするか?」
揶揄するようなその言葉にディアッカは笑い、イザークの頬にキスをする。
「似合わないからやめておくよ」
自分を見下ろすパープルの瞳に、イザークはふっと目を閉じた。
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