シュンッ。
 乾いた音がして二人部屋のドアは閉まった。それと同時にディアッカは制服の前を肌蹴てくつろいでいる。
「イザーク?」
 入口近くに立ったままいるルームメイトにディアッカは声をかけた。
「あぁ」
 促されてイザークはベッドの上に座る。
「なに、緊張してんの?」
「緊張なんて」
 そういうイザークをディアッカはそっと横から抱き寄せた。
「別にとって食いやしないって」
「わかってる」
 卒業試験の前にしたイザークとディアッカの約束。
 それはずっと傍にいることを約束する、ということだった。守れない約束はしない主義のイザークにとってそれはすなわち一生の誓いに等しい。だからこそディアッカに課した条件は簡単にはクリアできないはずのものだったのだ、相手の本気を試すにはそれが必要だったから。
「こんなことになるのなら条件を5位以内にするべきだったな」
 悔しそうにイザークはそんなことを言う。それにディアッカは小さく苦笑した。
「勘弁してよ。これでも精一杯なんだぜ、これ以上条件あげられたら無理にきまってるじゃん」
「ふん、どうだか」
 ふだんは実力を発揮していないというのはわかっていたが、難しいはずの条件をクリアしたのだ。それも本当のところは本気かどうかもあやしかった。いつも飄々としていてつかみ所がないのだから、自分に対してさえ本当の力を見せているのだろうか、とイザークは思う。
 けれど、そんな男が自分との約束を果たすために、その条件をクリアするためにあんな成績を収めたのだ。自分のために多少なりと本気を出したというのは確かにイザークにとっては嬉しいことだった。
「オレがクリアできない方がよかった?」
 ディアッカが条件をクリアしなければ、イザークとディアッカの関係はアカデミーの卒業と同時に終わりにする、というのがもう一つの条件だった。だいたい、配属先がどうなるのかわからない状況で今までの関係が続くとは思えないがそれでもイザークとしては曖昧なままにするのは嫌だったのだ。
「そんなこと言ってないだろうが」
 少しだけムキになってイザークはかけられた鎌にひっかかった。イザークだってディアッカにはクリアして欲しいと思っていた。別れを望む気持ちがあるわけじゃない。だけどズルズルとしたままの今の状況は自分にとってもディアッカにとってもよくないと思ったからはっきりさせたかったのだ。
「けどさ」
 小さく笑いながらディアッカはイザークを覗く。
「なんだ?」
「配属が全然違っちゃったら約束を確かめられる機会もなくなっちゃうな」






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