ルームメイトだったディアッカと一線を超えて、イザークはディアッカにずっと自分の傍にいることを求めた。その必要条件として卒業試験での10位以内がイザークにより命じられたのだが、難しいと思ったその課題もディアッカはあっさりとクリアしてしまった。
「能ある鷹はなんとかってやつ?」
イザークみたいにいつも全力だと疲れちゃうでしょ。オレは省エネ型だから、とからかってディアッカは笑う。その答えにムッとしながらイザークはもう一度ボードを見直した。ディアッカと5位の差は4点だった。
「詰めが甘い。あと4点くらいなんとかしろ」
偉そうに言うイザークだったがアスランとの差は9点だった。といってもアスランは満点に4点届かない完璧な出来だったから、満点に10点以上足りない自分の成績がなおさら悔しくて仕方がない。
「それより、イザーク」
ムッとした顔でニコルと話をしているアスランを睨みつけているイザークの肩にディアッカは手を掛ける。
「部屋に戻ろうぜ。配属発表の16時までフリータイムだ」
最終試験も昨日終えて、アカデミーでのカリキュラムは全て終了してもうここでの授業はなかった。
今日は成績発表と配属先の辞令交付があって、退寮日の2日後まで生徒たちは残り少ないアカデミー生活を自由に過ごすことが許されていた。部屋の片づけをする者や自宅に帰る者、自主的に訓練をする者などさまざまだった。
アカデミー生活最大の山場である卒業試験の成績発表を終えて、すっかり緊張の和んだロビーでは集まっていた生徒たちが三々五々に散り始めている。とはいっても、3時間後には各自にあてて配属の辞令が届き、それが今後の人生を左右するといっても過言ではないから完全に緊張が解けたわけではないが、それでも成績によってある程度は配属が決まるので成績発表を終えたことは精神的にも大きかった。
「だが、配属はまだわからないじゃないか」
イザークはルームメイトにそう言った。ディアッカの促す理由はわかっているが、今さら、という気がしてなかなか素直に従うことは出来ないのだ。
「だからだろ。配属決まったあとなんてどうなっちゃうかわかんないんだから」
お互いに別の部隊に配属になったら、変に惜別の気持ちが増すことになるかもしれないし、イザークの配属先がアスランより劣っていたら癇癪を起こすかもしれないのだから。
紫色の瞳でそう覗き込まれてイザークは返す言葉がなかった。
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