「で?」
さっさと部屋に帰ってきていたアスランをイザークが訪ねたのはそれから30分以上たってからだった。壊すくらいの勢いでインターフォンではなくドアを直接叩いたイザークに、アスランは面倒くさそうにドアを開けながらそれを迎える。
「できるようになったぞ!」
得意満面で言うイザークにアスランは肩をすくめてみせる。
「意外と早かったな。もちろんやってみせてくれるんだよね?」
促すアスランにイザークは頷くと手にしていたさくらんぼを口に含んだ。が、それはアスランによって妨げられた。
「何をするっ」
抗議するイザークにさくらんぼを取り上げたアスランはくすり、と笑う。
「確かめるなら直接のほうがいいと思って」
言われた内容を理解しかねてきょとんとしているいざの隙をついてアスランは、その腰を抱き寄せるとそのまま強引に口付ける。
「……っ、んっ、……ぅ…んっ」
抗議の声も空しく、それはすぐに吐息に変わった。
「ぁ……んふぅっ」
絡み付く舌の動きに翻弄されて、イザークがアスランにしがみつく。意思を持った動物のように目まぐるしくねっとりと口中を弄ぶアスランに、イザークはもはや抗う力もなく、されるがまま湧き上がる熱のままに、キスに夢中になっていた。
「少しはましになったかな」
不意に途切れたキスの合間、告げられたアスランの声にイザークの目が見開かれる。
「マシ…だと?」
うっすらと熱に染まったブルーの瞳で見つめながらイザークが問う。
「そう。さくらんぼの茎を結べるやつはキスがうまい、って話知らない?」
理由を教えながらアスランは愉快そうに手にしたさくらんぼをひらひらとかざしてみせる。
「そんなこと知るかっ」
「遊びなれてるディアッカはうまかっただろう?」
言われてイザークは押し黙る。それなりに納得するものがあったらしい。
「ついでにいうと俺もうまかっただろう?」
その言葉にイザークははじかれたように顔をあげた。
「貴様、やったことないって言ってたじゃないか!」
「たしかにやったことはないけど、知ってたし、自信はあったよ」
だってイザークは俺のキスだけで立てなくなっちゃうんだからね、そういいながらアスランはイザークの唇にそっと指を這わせる。
それだけでぞくぞくと背中を駆け上がる電流のような痺れにイザークは思わず目をつぶった。それを見たアスランは目を細めて笑うと、細い腰に両腕を回しぎゅっと抱きしめる。
「もっとうまくなるように、俺が相手してあげるよ」
そういうとイザークが不満そうに睨みあげる。
「うまくなる必要なんてない」
「なんで?」
自分の提案を拒否されて少し不満そうなアスランにイザークはにやりと笑った。
「貴様が俺を満足させればいいんだからな」
思わぬ言い様に、アスランはあっけにとられそれから余裕を取り戻してにっこりと微笑む。
「なるほど。じゃぁ手抜きはできないね」
「当たり前だ」
無言のまま二人はしばらく見詰め合うと、ゆっくりと唇を合わせて甘く熱い口付けに身を任せた------。
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