moonlight serenade



「イザーク?」

 かけられた声に振り返る。その顔は見たこともないくらいに柔らかい。

「貴様も来てたのか。まぁ、考えてみれば当然だがな」

 それに複雑な笑みで返してアスランはその隣へと立った。

「ずいぶんご機嫌だね、こんなパーティ嫌いなのかと思ったよ」

 普段の言動からすれば着飾ったパーティなんてむっとした顔で出ているのかと思ったのだが、アスランの予想に反してイザークの機嫌は端から見てもわかるくらいに機嫌がよさそうだった。アカデミーのメンバーがみたら驚いて、そして笑うネタにするかもしれない。

「好きじゃないさ。だが避けられないのも事実だ」

 社交辞令の範囲だとイザークは笑う。だがその顔はどうみても社交辞令じゃなく機嫌がいい。さすがのイザークも訓練付けの毎日からほんの一時でも離れられるのは楽しいらしい。

「ディアッカは? 君らは一緒に来たんだろう?」
「あいつはナンパに忙しいんだろ」

 そうしてイザークの視線を追ってアスランは納得する。大勢の華やかに着飾った女性を相手にしてディアッカは水を得た魚のように生き生きとしていた。

「婚約者殿に挨拶はしたのか」

 嫌味でもなんでもなくイザークは問う。その存在は公なのだからそれを受け入れなければやっていけないのは端から分かっている事だ。いまさら気にしたところで自分が情けなくなるだけだった。

「一応顔は出してきたよ、でもある意味今日の主役だからリハーサルがあるとかで忙しそうだったから早々に退散してきたけどね」

 肩をすくめてアスランは苦笑いする。できればイザークとラクスのことなんて話したくないのが本音だ。





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