あぁ綺麗だなぁ。
サラサラの髪が光に透けていて、ガラスみたいなブルーの瞳は悔しいけれど隣のディアッカを見つめていて、何やら楽しそうに笑っている。
笑うとときどき女みたいに見えるくらいなんだからやっぱり美人なんだ。
そういえばこの前実習で怪我をした手の甲の傷はもう治ったのか、絆創膏も見えなかった。
唇は桜色だ。
唇・・・・・・遠くに見ながら、アスランの視力はばっちりその輪郭を捉えてしまう。
そして同時にさっきのラスティの言葉が蘇る。
キス。
イザークとキス・・・。
かぁぁぁぁ、と再び真っ赤になったアスランを隣で眺めながらニコルは小さく息をつく。
「ほんとに分りやすい人ですね」
ニコルの言葉にアスランは慌てて表情を元に戻す。
「べ、別にいいだろ・・・」
イザークから視線をもどすと皿に残っていたカレーを一気に口に運んだ。
「よぉ、そこ空いてるか」
不意に背後から声がかかり、アスランは振り返った。
見ればトレイを片手に立っているディアッカの姿がある。
「空いてますよ、どうぞ」
アスランが答えるより早くニコルが答えて二人分の席を確保する。
「あ、え・・・」
戸惑うアスランに周りのみんなが注目しながら、その向かいにイザークが座った。
真正面にイザークが座ってアスランの心臓が急にどぎまぎとし始める。
「なんだ?」
そんな態度を不審に思ったイザークが睨みつけるようにアスランを見た。
「い、いや別に」
動揺を隠し切れないアスランにディアッカはニヤニヤと笑い、ニコルはため息をつく。
あぁやっぱり。
イザークは綺麗だ。
そして見てるだけで幸せだと思ってしまう。
「アスラン・・・」
「へ?」
あまりに伸びた鼻の下にニコルがその肩を叩いて意識を引き戻した。
「その顔なんとかしてくださいよ。そのうち本人以外全員に知れますよ」
忠告のつもりの言葉はアスランには違う意味に聞こえたらしい。
イザークだけには知られないなら別にいいや。
「あ、壊れた」
ラスティが呆れるようにいう先でアスランの腑抜け面はますます悪化していく。それにイザークは奇妙なものをみるように眉根を寄せるのだが、それさえも今のアスランには幸せに思えた。
すぐ目の前にイザークがいるんだから。
それを見てるだけで幸せだし。
「なんだこいつ」
イザークの呟きはアスランには残念ながら届かなかった。
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