カレッジから帰ると、同居人であるイザークは何やら自室に籠もって課題をこなしているようだった。
戦争が停戦になったのをきっかけに、俺はイザークと同居を始めた。
本当は一人暮らしをするつもりだった。
両親ともなくしてしまった自分は何をするにも自由だったから、戦前まで住んでいた家ではなく部屋を借りることにして、戦争中のいろいろなしがらみから解放されてゆっくりと時間を持ちたいと思っていたから。
でも、彼がそれを阻止した。
「貴様、カレッジに通うんだろう? なら俺と同居しろ」
提案ではなくそれは命令だった。
「え、イザーク? きみ何言ってるかわかって・・・」
突然家にやってきて、有無を言わさずそれは決定され、そして俺は従って今に至る。
借りるはずだった1LDKの部屋は同じ建物内の2LDKの部屋へと変更されて、引越しの日取りも買い揃える家具も全てイザークが決めてしまった。もっとも彼に言わせると俺はセンスがないから、決めてやったのだということになるのだそうだが。
イザークも軍を辞めたあとはカレッジに戻るつもりだった。
もともと母子の仲のいい家庭だったが、エザリア・ジュールは以前とは立場が違ってしまったというのもあるし、イザーク自身も軍生活を経験したことで成人した男として家を出ることが自然だと思うようになったらしい。いつまでも母子べったりではいられない、というわけだ。
だが家を出ることについて母親に納得させるにはイザークはまだ弱かった。だから、俺と同居ということを条件に家を出る許可を得たのだという。ザフト時代の同僚であり、パトリック・ザラの息子であり、そして戦争で両親を亡くしたアスランと生活をする、ということは自分の息子が成長した証だと母親には映ったようだ。
全くもって勝手な話だったが、俺が断らなかったのはどこかで一人になることを恐れていたからかもしれない、と思う。たとえその相手がイザークでも、誰かが同じ屋根の下にいるということで、実際、癒されてるのも事実なのだ。
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