「で、どうする?」
手持ち無沙汰に雑草を手にとっていたイザークに声をかける。いくらなんでもいつまでもここに二人でいたら間が持たないことくらいアスランにだって予想がついた。
「貴様はヨーヨー釣りをしたことあるのか?」
「1回くらいは・・・」
コペルニクスのお祭りでそんなことをやったような気がする、記憶を探りながら答えるとイザークの顔が悪戯を思いついた子供のように輝いた。
「じゃあ勝負だ!」
「勝負?」
「ヨーヨー釣りと金魚すくいと射的の3本勝負。2勝した方が勝ちだ」
スラスラと夜店の名前をあげたイザークはいつもの負けず嫌いとは違う、無邪気な顔になっている。
あぁきっと小さなイザークもこんな顔をしていたに違いない。その頃に会えなかったのはやはり少しだけ悔しいかな。
「いいよ。ハンデはいらないから」
アスランが不適に笑うとイザークは当然だとばかりに浴衣の袖をまくる。
「負けたら夜店の食べ物、全部奢れよ」
「イザークが食べるのか」
「いいだろう、それくらい」
意外に痩せの大食いのイザークなら確かに片っ端から食べたところで明日の訓練で消費してしまうだろう。
「いいよ。その代わり、俺が勝ったらお願いを聞いてもらおう」
「お願い? 何だ?」
「それは勝ったらいうよ」
「まぁいい。どうせ勝つのは俺だからな」
そうしてイザークは先導するように、人ごみの方へ歩き出していく。
カラフルな灯りとざわめきが近づいて、頭上では連続で大きな音が打ちあがり、カラフルな光が花開く。
「アスラン!早くしろ」
子供のような表情でイザークは笑っている。
あぁ、この勝負、どうしたって勝たなくちゃいけない。
そんな君を見たら、抱きしめたい自分はもうきっと止められやしないから。
得意な君に勝ったとき「抱きしめたい」と言ったらいったいどんな顔をするんだろう。
人ごみの先でイザークが金魚すくいの店の前で振り返った。
「約束は守ってもらうよ、イザーク」
慣れない下駄の早足で追いつくとイザークが真っ直ぐにアスランを見つめている。
その背後でまた一つ、大きな花火が打ちあがった。
まるで、イザークの笑顔を照らし出すように。
fin.
2007.07.30
アスイザ好きさんに28のお題
NO.6 「休日」
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