Snow angel

 細いスキーのシュプールが目の前に描かれていく。
 背負った荷物の重さが、降り始めた雪の積もる白い雪面にそのまま反映されていた。

 雪の中で行われる作戦を想定した訓練。
 ザフトが訓練用にもつプラントでそれは行われる。訓練内容に合わせてコントロールされる気象の設定はもちろん雪。目に見える範囲の全てが真っ白で、スタート時点では止んでいた曇り空も、日が暮れるころから降り出して慣れないスキーとストックが次第に重くなってきていた。
「イザー・・・」
 ディアッカは目の前の背中に声をかけようとしてその言葉をしまいこんだ。
 この訓練では、ゴールのタイムが成績になる。任意で2人から4人までのチームを作り、定められたポイントでチェックを受けてゴールに向かう。
 イザークとディアッカは当然のように二人でチームを組んだ。イザークがチームを組んでも構わないと思う人間は数少なく、その中でもトップでゴールできると思われる人間はさらに限られていた。ディアッカはイザークと組むことに異論はなかったが、ただ今回の設定が降雪ということでいつもよりもテンションが低かった。
 案の定、ディアッカはイザークの足を引っ張っている。とはいってもディアッカのこと、あからさまな足手まといとまではならなかったが、それでもイザークが予定したタイムよりもだいぶ遅れてチェックポイントを過ぎたのは確かだった。
 自分のせいでイザークがイライラしているというのはディアッカにもわかった。だから、声をかけるのを躊躇ったのだ。
「ディアッカ、今日の日没時刻は?」
 前を行くイザークが声をかける。ディアッカは時計を見ながらブリーフィングで仕入れた情報を思い出して告げる。
「16時43分」
 現在の時刻は15時33分。
「ならば今日はここで野営だ」
 イザークは言うと、スキーを脱いでとっとと作業を始めた。
「野営って・・・?」
「雪洞を掘るんだ。日が落ちると気温が一気に下がるからな、その前に済ませる」





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