「それはまぁそうだが」
 手のひらの中の雪球に視線を落としたイザークは、次の瞬間、立ち上がったディアッカに抱きすくめられた。
「こら・・・っ」
「子供の遊びも楽しいけどさ、今はもうちょっとロマンチックな方がよくない?」
 抱かれた腕の中、視線で示す先を追いかければ、ちらほらと空から落ちる白いもの。
「降ってきたのか」
 降りそうな空ではあったが寝るまではもちそうだったのに、どうやらそれも時間切れらしい。
「今は雪遊びしてずぶ濡れになるわけにはいかないし」
 その言葉に頷くとイザークはディアッカの頬に手のひらを添える。
「ロマンチックかどうかは知らないが・・・二人でいれば少なくとも寒くはないな」
 味気ないイザークの言葉に「つれないなぁ」とつぶやきながらディアッカはイザークの唇にそっと自分のそれを重ねる。うっとりとそれに身を任せていたはずのイザークはけれども不意打ちをしてディアッカの後頭部に手にしていた雪だまをぶつけてやった。
「ってぇ・・・」
 至近距離から投げつけられた雪は握り方がやわらかかったのもあって、金色のクセ毛の上でべしゃりとつぶれて広がった。
「あのときは俺が当てられて終わったからな」
 小さいころの雪合戦を持ち出して言うイザークにディアッカは「はいはい」と肩をすくめる。
「こんなシチュエーションじゃロマンチックっていうのも無理か」
 今は訓練中で、互いに着ているのは訓練用の防寒着だし、あったかいベッドもなくこれから降り続けるであろう雪を避けて眠るのは寝袋と狭い雪洞の中ときている。
「仕方あるまい、この訓練でアスランたちの組に勝てばいくらだって相手してやる」
「えっ、マジっ?」
 思わぬ言葉にディアッカが舞い上がりそうになって、けれど、イザークはその上を行って容赦なかった。
「そうしたかったら、明日は日の出と同時に起きるんだな。きっとあいつらは次のポイントまで行ってるはずだ。挽回するなら日の出前でもいいくらいだ」
 さぁ、寝るぞ、と背中を向けたイザークのてうびを掴んでディアッカは無理やりに振り向かせる。
「ディアッカ!」
「でも、少しだけ付き合ってよ。こんな雪の中でイザークと一緒なんて次はいつかわかんないし」
 イラつくブルーの瞳は、地面で萌え続ける炎をじっと見つめてオレンジに染まる。
「勝手にしろ」
 言って背中を向けたイザークを「そーする」と言いながらディアッカは抱きしめた。
「イザークってほんと雪の妖精みたい・・・」
 耳元でささやかれたイザークは大げさな表現に、けれども不思議と悪い気はしなくて小さな声でつぶやいた。
「バカか」
 その頬は炎の色だけじゃなく、ほんのりと赤く染まっている。それに気づいたディアッカはくすりと笑いながら抱きしめる腕に力をこめた。



 空からは雪が次々と降ってきて、うっすらと肩に雪が積もるまで、二人はずっとそのままだった------。







2006/5/4




66666hitリクエストで。
「雪」にまつわる話、ということでしたが・・・・・・。
今、いつよ?(滝汗
すみません・・・・・・・・・っっっ(平謝り)
お待たせするにも限度があるって話ですよね。
おまけにこんな話・・・。
ほんと、ごめんなさいっ
これに懲りてしばらくはリク活動を自粛しようと思いま・・・(今更遅いわっっっ)
瑞稀さんリクエストありがとうございましたっv




9
BACK←