予想通りにイザークとアスランは対戦することになった。既にお互い他の人間と一度対戦しているが、あっけなく勝負がついてウォームアップ程度にしか疲労していない。
 面と向き合ってナイフを構える。
「手を抜くなよ」
 アスランに向かってイザークが言うと、当のアスランは何も言わずに目を伏せる。それが開いた瞬間に翠の瞳には真剣な色が浮かんでいる。イザーク相手に気を抜いたらいくらアスランとはいえただじゃすまないということだ。
「始めッ」
 教官の合図でその勝負は始まった。
 アスランが繰り出す剣先をイザークは器用に避けていく。背の低さと女性特有の身体の柔らかさを生かして、イザークはアスランを翻弄していた。
 カッ、キンキンッ。金属のぶつかる甲高い音が響く。
「くっ」
 アスランのナイフを受け流したイザークは攻めに転じた。その繰り出す速度はアスランの予想以上で紺色の髪が数本、宙に舞う。
「ふっ」
 それを見てイザークは笑い、さらにアスランを追い詰める。精一杯それをかわしながらアスランは横に飛び、低く地面に手を突いた。イザークはその手を足でなぎ払うが、アスランは寸でのところで飛び去った。そのまま横にナイフを振りぬくイザークにきつく視線を向けて、イザークを上回るスピードでアスランはその懐に飛び込む。続けざまに振り出される剣先にイザークは身体をそらせて避ける。そして少しでも攻めようと負けずにナイフを突き出してくる。
 キリがない。
 負けず嫌い全開、本気で攻めてくるイザークにアスランは思った。女だからと思っていては本当に自分が怪我をしてしまう。
 こうなったら・・・。
 リーチの差は絶対だった。15センチ以上身長が違うのだ。自分の間合いに持っていけば有利に勝負を運べる。そう思ったアスランは一旦引いて呼吸を整えた。
 無言のままお互い向き合う。イザークは肩で息をしてアスランを睨んでいる。
 次が勝負だ。
 お互いにそう思っていた。


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