だがそこへ予告もなく部屋のドアが開けられる。
「イザークいるんだろ?」
入ってきたのはラスティとアスラン。アスランは同室のラスティに無理やりに連れてこられたような格好だ。
だが、その二人の視線はイザークに釘付けになる。
「うわお?!ヒュウゥゥー!」
目を見開いたラスティは茶化すように口笛を吹いて、アスランは真っ赤な顔をして視線をそらした。
「何してるんだ、貴様・・・」
アスランを見たイザークは何も気づかないで不思議そうに言う。そんなイザークにディアッカは無言のままで脱いだ制服を投げつけると、一瞬で立ち上がってラスティの首にラリアットを食らわせた。
「何だこれは?」
「がぁっ、やめろよ、ディアッカーっ」
イザークの声とラスティの叫びが重なる。
「いいから、それ着てください、イザーク」
ラスティの首を絞めそうな勢いで押さえ込んでいて、質問に答えないディアッカの代わりにニコルが言った。
「シャワー浴びて暑いんだ、こんなもの着られるか!」
どこまでも気づかないイザークにニコルはため息をつきながら解るように言ってやる。
「じゃないと目のやり場に困るんですよ・・・」
別にボクは構いませんけど、と付け足すこともニコルは忘れない。言われたイザークは自分の胸に視線を落とし、慌てて制服をかき抱くようにして声を上げた。
「き、貴様ら、出てけーっ!!」
イザークの声とともに床に崩れ落ちたラスティを引きずるようにしながらアスランが部屋を出て行く。
「ニコル、貴様もだっ」
イザークくの八つ当たりに「せっかく紅茶入れたのに」とつぶやいてニコルも後に続いた。
パタン、とドアが閉まると部屋に残ったのはディアッカだけだった。そのディアッカを軽く睨みながらイザークはまだ制服を胸に抱いたままだ。
「ここはオレの部屋だ、オレは出て行かないからな。不満があるならイザークが自分の部屋に戻ってくれよ」
イザークが何かを言う前にディアッカは低い声で先制する。それに言葉を失ったイザークは黙ったままベッドに座り込んだ。不機嫌なディアッカの言い方にイザークは必死で理由を考える。
「俺がくるの、迷惑なのか?」
らしくなく遠慮がちに聞いたイザークにディアッカは苦笑して答える。
「別に、迷惑なわけじゃないけどさ・・・」
イザークの隣に座ると制服を手からとってその肩にかけてやる。
「オレが言いたいのはもうちょっと女だってことを考えて行動してほしいってこと。じゃないとオレの気が休まらない・・・」
後半はつぶやくように小さな声だった。
「ディアッカ・・・」
潤んで見上げるヘイゼルの瞳に、まいったなとディアッカは視線をそらす。
「ついでにいうと、部屋でシャワーなんて浴びられちゃうと、オレのムスコも休まらないんだけど・・・」
その言葉にイザークは真っ赤な顔をして制服の前を合わせる。
「ば、ばか! 明るいうちから盛ってるんじゃないっ」
「イザークが悪いんだろ、そんな格好するから」
「シャワー浴びたかったんだから仕方がないだろ!」
するとディアッカは華奢なイザークの頤を持ち上げてそっと耳元でささやく。
「じゃ、せめてシャワーの利用料もらわないとな」
そして指先で唇をなぞるように縁どるとゆっくりと深いキスを交わした。
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