その最たる被害者が当然のことながらディアッカだった。
勘弁してほしい・・・というのがディアッカの本音だ。
アスランはまだマシだ。イザークが女になったからと言って態度を変えるようなやつではないから。ニコルも面白がってみているだけだから害にはならない。だがそれ以外はイザークが女になったことで明らかに態度が変わってきているのだ。
「おい、ディアッカ帰るぞ」
さっさと歩くイザークの背中を複数の視線が追っているのにディアッカは気づいていた。ポニーテールに結い上げた髪は揺れて、その項は無防備なほどにさらされている。男だったときとさして変わらない言動でも周囲の注目が集まっているのは、イザークの一連の事情にミーハーな連中が興味津々で見ているからだからだった。そして予想以上の美少女ぶりに惑わされていたりするのだから、中味が変わらずにイザークであったとしてもディアッカの心配はつきることはない。
「まじ、かわいいよな、見掛けだけならさ」
「てかイザークって元から美人だったけどさ、どっちかっていうとかわいいほうがあってんじゃん? キレイすぎると嫌味だけど、かわいい顔だとなんか許せたりしない?」
通り過ぎたディアッカの耳に、そんな言葉が入ってくる。ちらり、とそいつらの顔を確認してからディアッカはイザークの後を追う。
イザークがかわいいなんて冗談じゃない。そんなのはオレだけが知っていればいいことだったのに・・・。
「帰るってお前の部屋は女子寮だろう」
当然のように男子寮に向かうイザークにディアッカは背中から声をかける。
「女子寮は男子禁制だが、男子寮への女子の出入りは自由だからな」
イザークはまるで気に留める様子もない。そんな美少女っぷりで野郎の巣窟に入り込むなんて本来なら馬鹿もいいところだ。だが、イザークにとって男子寮はいわば住み慣れた場所で女だらけの女子寮に戻るよりもずっと居心地がいいらしい。
「って、お前シャワー浴びなくていいのかよ?」
イザークは汗をかくとすぐにシャワーを浴びるのだが、男子寮に直行するとなればどうするつもりなのだろう、とディアッカは聞いた。
「お前の部屋で浴びる。着替えならもって来たぞ」
手にした巾着をぶんぶんと振り回しながらイザークはご機嫌で応える。なんでそーいうところは抜かりがないんだ、と揺れるポニーテールの後姿にディアッカは頭を抱えた。
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