アカデミーの寮の玄関に人ごみが出来ているのに、階段を降りてきたオレンジ色の髪の少年は気がついた。
「なになに、どしたの?」
人ごみを掻き分けながら先に進むと見慣れた鶯色の背の低い少年がいた。その先をみると、そこにいたのはアカデミーの制服を着た見慣れない一人の少女。
ややくすんだ金髪をポニーテールに結い上げて、ヘイゼルの瞳は大きくすっきりとした顔立ち。制服は男子と共通のスラックスではなく、短いスカートに膝上までのストッキングをはいていた。
「誰あの子、超かわいいじゃん」
何気なくもらしたその一言に隣の少年は振り返った。
「それ、本気で言ってるんですか、ラスティ?」
「本気も何も思ったことそのまま言っただけじゃん。それが何だよ、ニコル?」
邪気もなく言うラスティにニコルはそっと耳打ちする。
「それ、ディアッカの前で言ったらボコボコにされますよ」
「へ、ディアッカって?・・・え、じゃぁあの子が・・・!」
驚きにニコルは頷いた。
「イザークですよ。復学するって聞いたでしょう」
ラスティやニコルたち野次馬の前に現れたのは、そのディアッカだ。当然のようにイザークの荷物を運んでいる。
「部屋は女子寮だろ、なんでここに寄るんだよ?」
ディアッカは問いかける。
「戻ってきたんだ。挨拶くらいしたっていいだろうが」
そういうイザークにディアッカは内心ハラハラしてた。よりによってイザークはスカートを履くと言い出したのだ。「俺は潔い人間だから、女になったからにはスカートだって履くんだというところをみせてやるんだ」、などと言いのけて。自分のその脚線美を理解してないだけにたちが悪いとディアッカは頭が痛くなりそうだった。
不機嫌なディアッカにお構いなしにイザークは野次馬を向いていった。
「女になったからって、貴様ら油断するなよ!」
それだけ言うと満足したように女子寮への渡り廊下を歩いていく。
「あのー、ディアッカ?」
遠慮がちに背中からニコルが声をかけると、振り返ったディアッカは小さな声で告げる。
「あとでラウンジに行くから」
それだけ残すとずんずん先を進むイザークを慌てて追いかけた。
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