追 憶

「アウルーッ!」
 モニターにはアビスが撃たれたことを示すアラームがうるさいほどに響いている。
 敵の攻撃を必死に交わしながら、けれど、沈んでいくそれを追いかけることもできやしない。
 戦闘状況も無茶苦茶だった。敵がたくさん入り乱れて、しかも戦闘能力も恐ろしく高くて、スティングは自分の思うように動けない。ザフトの奴らだけならこんなにもなってないはずなのに、変な奴らが横槍を入れてきて、それがむちゃくちゃ強い。
 楽勝なはずだったのに、それはもうありえない話になっていた。
「くっそ!」
 クルクルと機体を操りながら、自分を守るのに精一杯だった。
 こんなはずじゃなかったのに!
「ちっ!」
  帰還信号が発せられたときには、あたり一面、敵も見方もなく、勝ちも負けもなかった。ボロボロになったカオスを母艦に戻しながら、スティングはカタパルトで強くモニタを叩いた。
「アウルがっ・・・!」
 回収に向かう部隊が次々と発進しているが、カオスでは水中には手も足も出ない。自分にはどうしようもないことをスティングは理解していた。


「オレ、ステラ嫌いだよ」
 ベッドの中でアウルは言った。
「何突然言ってんだよ」
 興味なさそうにスティングはそれでも聞いてやる。
「だってあいつ、いつも『ネオ、ネオ』って言ってるくせに、ネオがいないとスティングに構ってもらうじゃん」
 やきもちをあらわに言うアウルは、うつぶせに寝ながら膝を曲げてばたばたと足を動かしている。
「別にオレは構ってるってわけじゃないぜ。あいつは妹みたいなもんだろ? 放っておくとどっか行くからな。年長者として気をつけてるだけだって。それに・・・」
 言葉を途切れさせてスティングは隣のアウルの体を抱き寄せる。
「構うっていうのは、こーいうことすることだと思うけど」
 愛おしそうに首筋にきつく口付けを施して、裸の体をなで上げる。気持ち良さそうに目を細めながら、空色の髪の少年は年上の少年の首筋に腕を回した。
「スティングはオレだけのもんだからな!」
 その様子に苦笑しながら、鶯色の髪の少年は、抱きしめた体に深く舌を絡めた。





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