コーディネーターは死ぬような病気にはならないとされている。
それは正しい。
ただ、まったく病気にならないというわけではない。症状はナチュラルに比べれば軽めということになるのだろうが、
それなりに病気にはなる。そして、たとえばそれがナチュラルだったら命の危機とされるものが、
しばらく寝込むレベルになるという話である。
「ディアッカ」
聞きなれた声が、どこか遠くから聞こえた気がして、オレは気がついた。
寝返りを打って、重いまぶたを上げると、ぼんやりとイザークの銀色の髪ときれいなブルーの瞳が見えた。オレの好きな顔。
「あ、イザー…ク…」
思ったより声がかすれて途切れがちになる。げ、完全に病人モードじゃん。インフルエンザってこんなにしんどいのかよ、って。
もうダウンして3日目なのにさ。
「薬取ってきたぞ」
ぶっきらぼうな言い方はあまり機嫌がよくないな。
「あぁ、サン、キュ」
ぼうっとして起き上がりながら、イザークの格好に気がついた。軍服の襟元が開いたままで、髪の毛も乱れてる。どうかしたわけ?
「…テスト、終わったのか」
朝出かけていくときに、デュエルのテストに夕方まで時間がかかりそうだと言っていた気がした。その割には壁のデジタル時計は
午後1時過ぎだし。
「ふん、そんなもの終わらせた」
いつもの調子でいうけど、かなり急いで帰ってきたのだということがわかった。じゃなきゃ、その髪の毛はありえないし。
そして担当メカニックにかなり同情した。あぁご愁傷さま。
「水、くれる?」
見上げるようにしていうと、無言ですぐにグラスが差し出される。ついでに薬の錠剤も、必要な数だけ添えられて。
「悪いな。迷惑かけて」
受け取りながら言うと、イザークの機嫌が悪くなった。
「迷惑? 俺はそんなこと言った覚えはない」
「そうか?」
ごくり、と飲み干しながら聞き返す。
「迷惑だったら、お前などとっとと病院に突っ込んでいる」
突っ込んでいる、という彼らしい表現に力が入らないながらも笑ってしまう。
迷惑なはずだった、間違いなく。病院で診察を受けたときには、ドクターにあきれられるほど重症になりかけてたから、
即座に入院を勧められたんだけど。
でも、オレは自室にて療養ということになった。
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