包帯に覆われた顔の持つ熱も痛みも忘れて、その目の前の顔に視線が釘付けになる。
 さっきまで怒りに支配されていた感情がまるで霧散してしまったのかのように、ただただ、驚いて。
「ディアッ・・・カ・・・?!」




dried tears




 軍医が部屋を後にし、薄暗い照明がベッドサイドを照らす医務室。一人残された負傷患者であるイザークは、ギリギリと怒りにシーツをきつく握り締めていた。
 強い麻酔をかけて跡を残さず縫合しようとした医者にイザークはそれを許さなかった。屈辱を忘れないために傷を残すこと、それはイザークのプライドだった。最低限の局部麻酔と縫合で処置をした後、痛み止めさえ拒む赤服のエースパイロットに向かって、パイロットとして役立たずになるつもりかと半ば脅して鎮痛剤を点滴投与し、漸く医者は席を外すことが出来たのだ。
 それから間を置かず、医務室のドアが音もなく開いた。
 戦艦の医務室に面会謝絶はない。イザークが一人でいることを望んだとしたらそれは叶えられないことではないだろうが、あえてそうする必要もないだろうと思って特にどうするつもりもなかった。こんなときに自分に会いに来る人間なんて限られていたし、そもそもイザークはストライクに対する怒りでいっぱいで、人に会うとか見舞われるとかそんなことまで頭が回らなかった。





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