包帯を巻いた綺麗な顔を怒りに染めて突き放すように吐き捨てる。その声に目が覚める思いがした。
「そう・・・、だな。オレ、何言ってんだろ、ちょっと混乱してた」
 イザークが弱気な言葉を受け入れるはずなんてなかった。たとえ傍にいて何もできなくても、そばにいることを選んだときからそれはわかっていたはずなのに。
 ゴシゴシと濡れた頬を拭って顔をあげる。改めてみるイザークの顔はやっぱり痛ましい。そこに手を添えてそっと唇を寄せる。拒絶はされない。触れるだけの唇は発熱している体温を感じさせて少しだけ乾いていた。
「イザークだけにはやらせない、オレだってストライクを討つ。あいつが落ちれば足つきだってあっという間に沈むからな」
 そうだ、自分はイザークを止めるために、助けるために傍にいるんじゃない。イザークと同じ道を歩むために傍にいようと思ったんだ。ただイザークの笑った顔が見たかったから。
「横取りは許さんからな、俺がいるときは俺にやらせろ」
 命令口調で譲らないイザークにディアッカは小さく笑う。その頬に白い指先が伸びる。
「俺のことなんかで泣くんじゃない」
 乾いた涙の跡を辿って呟くようにそう告げる。その顔は怒っているというよりは心配しているみたいだった。不似合いな表情にディアッカはたまらずその体を抱きしめる。イザークにそんな顔をさせた自分が情けなくて、でも心配してもらえることが少しだけ嬉しくて。
「大好きだよ・・・」
 大事すぎて自分を見失いそうになったほど。大切な人。
 その存在をこの手に抱きしめられることのありがたさが初めてわかった気がする。
「う、ん・・・」
 返す声がまどろみに支配されているのがわかってその体をベッドの上にそっと横たえると、片方だけの瞳が強請るようにルームメイトを捉えた。
「ちゃんと起きるまで傍にいるから」
 差し出された細い手を掬い上げるように両手で包み込むと、その表情が柔らかくなった。
「おやすみ、イザーク」
 白い包帯の上に口付けるとかすかに頷きながら、深い眠りの底へ誘われていく。その傍らに座るディアッカの頬にはもう涙の跡はない。そこにあるのは新たな決意を秘めた強い眼差しだけだった。









2006/3/26脱
 4/25UP





あとがき

今さらながらのお約束をモチーフにお題「泣いてるディアッカ」です。
いろいろ中途半端で見事に玉砕ですが(笑)
文章がまるで違うのが一番痛かったり・・・。
泣きたいのは私だよ(苦笑)


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