Friend or enemy




「イザーク、今度出会えばアスランは敵だぞ。撃てるかな?」
 自分のことを試すように言った上官の言葉にイザークは反射的に答えていた。
「むろんです、裏切り者など・・・っ」


 しかし、次にであったのはアスランの乗る機体ではなくバスターだった。

 それを見た瞬間にイザークの血は沸騰した。
 おろかなナチュラルどもはディアッカを殺しただけではなく、その機体まで奪って乗り回して!!
「よくもディアッカの機体でぇー、このナチュラルがぁっっ!」
 頭が真っ白になり、イザークは切りかかっていた。
 ディアッカが、ディアッカが・・・。
 どこかで生きていると思っていたのに、そう信じていたのに。
 ストライクと一緒に行動しているということは、つまりそのパイロットは地球軍。
 それはディアッカがもう生きてはいないということを確証していた。
「ちくしょう、ちくしょうっ!」
 ディアッカのカタキを撃つことができないのなら、せめてその機体だけでも破壊してやる。
 ディアッカの機体に他の人間など、ましてやナチュラルなどを乗せておくなどイザークには許すことなど出来なかった。
 デュエルの襲いかかる先で、敵の乗ったバスターはクルクルとデュエルの攻撃をよけていく。
 それがさらにイザークの体温を上げていく。まるで攻撃をためらっているような動きにイザークはなおさらに冷静さを失った。
「ふざけるなっ!!!」
 追い詰めてミサイルを撃ち込んだデュエルに、敵のバスターはランチャーを撃ち返して来た。それがイザークの機体を直撃した。
「っ!」
 そのときだった。
「イザークッ!」
 信じられない声がスピーカー越しにイザークの耳に届いた。
「・・・・・・っ、ディアッカ?!」
 聞き間違いだと思った。ありえない声だった。
「ディアッカ・・・本当に、貴様なのか?」
 イザークには似つかわしくない、恐る恐るといった声で聞き返した。
 次にモニターがつながり、同じパイロットスーツの少年の顔が映った。
「ああ、そうさ」
 確かに、同じ声、同じ顔。イザークの知っているバスターのパイロットがそこにはいた。
 うれしかった、その瞬間は。ディアッカが生きていた、ただそのことだけが純粋に。
 けれど、それだけに浸りきるにはイザークは優秀すぎた。
「それがなぜ、ストライクと共にいる? どういうことだ、貴様ぁっ」
 モニターから返事はない。
「生きていてくれたのは嬉しい。が、ことと次第によっては貴様でも許さんぞっ」
 心臓が嫌な鼓動を打っていた。
 生きていたディアッカ、ストライクと共にいるバスター。
 自分へ銃を向けた友人。
 なんでだ、何故、ディアッカ? 
 すこしでも早く答えが欲しくてイザークは潤んだ瞳でモニターを睨みつけた。
「イザーク・・・」
 一言だけつぶやいたディアッカの声はイザークの不安をさらに大きくするには十分なものだった。









⇒NEXT