「イザーク、お前宛に荷物・・・ってかこれは手紙か?」
ヒラヒラと薄い封筒を掲げながらディアッカがイザークの部屋に入ってきた。イザークの部屋とはいっても、共同部屋である以上ディアッカの部屋でもあるのだが。
今日は月に2度ほどプラント本国からの補給と共に隊員宛の荷物が届く日だった。
「手紙・・・?」
渡されたイザークは思い当たらないという顔をしている。
実際、このご時世に手紙というのは珍しい。コンピューターが全ての世界において、わざわざ紙媒体に文字を書き記すというのはセレモニー的な意味合いが強く、知人に宛てて手紙を書くというのはまず滅多になかった。
不思議そうに裏返したイザークは、けれどもその差出人を見たとたんに顔色が変わった。
「イザーク?」
目に見えてわかるほどに驚いた顔をしたイザークにディアッカは心配になって確かめる。それには答えずにイザークは薄い荷物の封を開けると中味を確かめた。その中から出てきたのは、一枚の便箋とさらに封筒に入った手紙。
恐る恐るその便箋をあけるとイザークは目線を落として文字を追った。しばらくして、それを畳むと同封されていた封筒を大切そうに開ける。真っ白い便箋を開く前にイザークは、背後から心配してみているディアッカに一言説明した。
「エディの母親からだ。これは形見だと・・・」
それを聞いたディアッカはイザークの表情の硬さに納得がいった。
エディというのはイザークのカレッジでの研究仲間で、先月搭乗していた艦が戦闘により撃沈されて死んだのだ。
酷くショックを受けていたイザークだが、こんな形で彼の遺品がやってくるとは思いもしなかったのだろう。戦闘中にしかも乗っていた艦がやられたとなればMSパイロットが戦闘で命を落とす場合と違い、その人間の所持品は肉親にすら帰ることはないのだから。
「アイツが死ぬ一週間前に自宅に送っていた物の中にあったそうだ。まるで死期を知っていたようだ、と・・・」
パサリ、と乾いた音をさせてイザークは便箋を開く。
そしてゆっくりと、イザークはその手紙の文字を追い始めた。
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