「くっそ、しつこいぞイザーク」
 いつまでも追いかけてくるイザークにディアッカは根を上げかけて文句を言う。
「今さら何を!俺の性格なんて知ってるだろうが」
 学年次席の体力はダテじゃなく、砂浜でもどこまでもディアッカを追いかけてきた。
「こうなったら・・・」
 言ってディアッカは波のほうへ向かって走り出した。そしてジャブジャブと海へと入っていく。
「おい、ディアッカ?!」
 後ろからイザークが声をかける。
「海に来たんだから泳がなくてどーするんだよ、水泳だって得意だろ?」
 言いながらもディアッカはどんどん沖へと逃げていった。
「なら、海に逃げたこと後悔させてやる」
 そういうとイザークも海の中に進んで、あっという間に肩までの高さの海水に浸かると、バシャバシャと泳ぎだした。その速度はディアッカを上回る。
「げ、アイツ本気だ」
 後ろから猛然と追いかけてくるイザークにディアッカは冷や汗を流すと、ダラダラと泳いでいたモードを切り替えて逃げることに全力を費やすことにする。
「これが海水か。浮力が違う・・・」
 泳ぎながらイザークはそんなことを思った。そして前を見るとディアッカが段々近づいてきた。
「遅い!もう追いつくぞ」
「お前が早すぎるんだよ」
 いつも抱きしめるときは細いなとディアッカは思っているのに、あれはやはり体質で太くなれないということなのだろう。イザークの鍛えられた体は無駄なく筋肉がついているから筋力も半端じゃないし、持久力だって文句なしだから、泳ぎ始めたら追いつかれるのはあっという間だった。
「見ろ、追いついた!」
 そしてイザークはディアッカの腕を掴まえた。
「うわ、バカ、腕つかむなよ、泳げないだろっ」
「立ち泳ぎで充分だ」
 イザークに腕をつかまれたままディアッカは二人で海の中で水を蹴り続ける。そこはもう足の着く深さではなかった。
「やっぱ、海って泳ぎやすいな、体軽いし。波は邪魔くさいけど」
「塩分があるから浮力が違うんだ」
 そんなことオレだって知ってるよ、と威張っていうイザークにディアッカは笑う。
「ただの大きな水溜りなのに、なんか楽しいよな」
 ディアッカが言うとイザークは当たり前だと鼻で笑う。
「生命は海から生まれたんだから、当然だろ」
「ふうん、そんなもんかね」
 そして、ディアッカはイザークの腕をつかむと強引に口付けをした。
「・・・っ!」
「海の中で記念のキス〜」
 ニカニカと笑うディアッカに、かぁっと顔を真っ赤にさせて、イザークは海水を一気に巻き上げた。ザバッと音を立ててディアッカは顔面に海水をもろに被る。
「げほっ、ひでっ、飲んじゃったじゃんか・・・・うわ、辛っ」
「ふん、調子に乗るからだ」


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