「あれ、あんた目の色・・・」
ふとディアッカがイザークに向かってそんなことを言った。するとイザークは目蓋を閉じてその上に指で触れて確かめる。
「あぁ、コンタクトが外れたんだな」
そういうイザーク・ジュールの瞳は左右で色が違っていた。右側は漆黒、左側はスカイブルー。
「コンタクト?」
聞き返したディアッカにイザークは何やら下を向いて目に触れながら答える。
「俺は母上によく似ているからな。ゲリラどものターゲットにならないためのカムフラージュだ」
そう言ったイザーク・ジュールの両目は晴れた空を思わせる蒼だった。どうやら残りのコンタクトを外したらしい。
そしてディアッカは昨日、彼の拳を受け止めたときに感じた違和感を思い出した。あのときのイザーク・ジュールは黒い瞳だった。だが最初にあったときは確かにこの蒼い目をしていたのだ。なるほどその顔は母である評議会議員のエザリア・ジュールにそっくりだった。白い肌に青い目、銀色の髪はメディアに度々登場しているエザリアと一目で親子だとわかるくらいのコーディネートぶりだ。
「カムフラージュって・・・学校の奴らは知ってるのか」
少なくとも昨日の様子では学校でもずっとコンタクトをしているようだったが、とディアッカは確かめる。
「知るわけないだろうが。でなければカムフラージュにならんからな。・・・だが、貴様に見られるのはこれで二度目か」
こともなげにイザークは言う。やはり最初に屋上でみたのは間違いではなく、コンタクトを外したところだったのだ。
「・・・オレがばらすとか思わないわけ?」
正体と言っては大げさだが、隠しているのを知られてしまったわりにイザーク・ジュールは落ち着いた様子だ。
「そんなことをしても貴様の得になどならんからな」
あっさりとイザーク・ジュールは言いのけた。そんなくだらないことをディアッカがするわけはないと。その的確な判断と人を見る目にディアッカはさすがだ、と小さく感嘆する。
「まぁな」
認めて頷きながらディアッカは立ち上がる。
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