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家を出たイザークはこのあたりで一番大きなショッピングモールにやってきた。この中にある書店は規模も大きく何より専門書の品揃えが充実していることがイザークを満足させている。だから家の近くの書店よりもこの店を贔屓にしているのだった。そのほかの店もバラエティが豊かで気晴らしや時間を潰すにはもってこいなのだ。といってもたいていは買った本を手にカフェに入って紅茶を楽しむのが常なので、ウインドウショッピングというものには縁がなかったのだが。
モールのエントランスに向かって一人で歩いているイザークは自分の数十メートル前に見たことのある人物が歩いていることに気がついた。
「エルスマン・・・?」
服装は私服で、しかもやたらと仕立ての良さそうなものを着ているが、褐色の肌に金髪なんてそうそういる取り合わせじゃない。
今日は学校に来ていなかったはずなのになんでこんなところにいるのだろう、イザークは一瞬考えて、彼が素行不良ぎりぎりである、という噂を思い出した。
「サボったくせにこんなところに出歩くとはいい度胸だ」
といってももう学校は終わっている時間だったから、他の人間が彼の姿を見咎めることもないのだが、イザークとしては学校で掴まえられなかった分、こんなところで出会って尚更にその行動が許せなかった。もとよりまじめが服を着て歩いていると称されるイザークの性格だ。説教の一つでもしてやる、とツカツカと歩く速度をあげてディアッカ・エルスマンのあとを追い始めた。
そのときだった。
ガッシャーン!!
ダダダダダダ・・・・・・
突如としてガラスの割れる音と爆音と銃声が当たり一面に響いた。
キャアァァ!
同時に上がる悲鳴と泣き声。
それにかぶせるように聞こえたのは武装したゲリラたちの勝ち誇ったような絶叫だった。
「青き清浄なる世界のために!」
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