「じゃぁ、また連絡するよ」
 ディアッカはホテルの高級ブティックで女が買い与えた服を着てそう言った。およそカジュアルとはいえない種類の服ははっきり言って自分の趣味ではなかったが、着せ替え人形になって相手の気持ちを満足させてやることも大事だということを知っていたから、相手が気に入った服を言われるままに着てやるのだ。そしてディアッカはどんな服でもそれなりに着こなしてしまうから一度も女を不機嫌にさせたことはなかった。
「携帯電話が変わるまでには鳴らして欲しいものね」
 あまりにも連絡が来なかったら買い換えるときにメモリーを消してしまうから、そう言いたい女にまだ十代前半の少年はにっこりと笑う。
「鳴らすだけならいつでもするけど? いちおーオレも学校あるし。今度の学校はお坊ちゃん学校だからなかなか抜け出せないんだよね」
 年下の少年にこんなことを言われて駄々をこねるような女をディアッカは選んだりなんてしなかった。こんな会話でさえその辺をわきまえている年上の女性との駆け引きの一部だ、そう理解しているからこそ、楽しむことができるのだ。
「そう。じゃぁ大人しくおやすみのシーズンまで待ってるしかないわね」
 少しつまらなそうに言った女がちょっとだけかわいそうに思えて、ディアッカはそっとその頬にキスをしてみせた。
「またサボるときには連絡するよ。今度はディナーできるように前もって連絡する」
 だからそのときはスケジュール空けてよね、紫の瞳で甘えるように見上げてディアッカが言うと、その女は普段自分の夫には見せないのであろうかわいらしい顔で頷いた。
「わかったわ、絶対よ」





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