Sweet Holiday

 ジュール隊の発足から3日後、ディアッカはようやく時間が取れたというイザークの呼び出しを受けていた。
「この辺だな・・・」
 自動誘導のカーナビは正確で、目的地の前に停止させるとディアッカは車を降りた。
 中心部の高層ビルから離れた街の一角には瀟洒なつくりの家が並んでいた。
 隊長となったイザークは官舎を与えられた。普通であれば利便性を選んで街中に住むところだが、イザークはそれを嫌がった。人嫌いの彼は、普段宇宙でいやと言うほど人の密度が高い生活なので、そこを離れたときくらい静かに暮らしたいという。
「で、選んだのがここかよ。まぁわかるけどさ。なんでオレが呼ばれるんだっつーの?」
 呼び出しの目的の大体は予想がついている。
 門を開けるとディアッカは当然のようにインターフォンは押さずにその下のパネルキーで自らのIDを入力し、勢いよく玄関のドアを引いた。あらかじめ登録されていたIDのおかげですんなりと音も立てずにドアは開いた。
「イザーク?」
 返事はない。勝手に玄関を上がり、廊下を進んでいく。
「いるんだろ、イザーク」
 けれどリビングと思われる部屋に姿は見えなかった。あたりにはうずたかく詰まれたコンテナボックスの山ばかり。
「・・・やっぱりな」
 予想が当たったのを知り、深くため息をついた。

 イザークは片づけが苦手だ。苦手と言うよりも関心がないのかもしれない。士官学校以来ことごとくイザークと同室になってきたディアッカはその惨状をいやと言うほど知っている。そしてそのほとんどを片付けてきたのはディアッカだった。
 今回、官舎に移るという話を聞いたときには、大量の私物の量からして、とてもじゃないがイザークの手に負える事態ではないだろうとは思っていたのだ。しかもジュール隊発足というタイミングが重なり、この一週間はろくに寝てもいないらしいから、状況は推して知るべし、だ。
 案の定、あらかじめ手配されていた段取りで本人には関係ないところで、荷物だけは運ばれていた。だが、その封すら開けた様子はない。
 ディアッカはその手伝いのために呼ばれたのだった。
「ま、どうせ荷造りしたのもオレだしな」
 そして気を取り直すと廊下を戻り、別のドアを押し開けた。





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